医療費の未払いを回収する方法|解決策から予防法まで徹底解説

医療費の未払いは病院経営を脅かす大きな問題です。経済的損失が発生するのみならず、督促状の送付などの慣れない業務は医療スタッフにとって多大な負担になります。近年は訪日外国人の未払いも増えている状況です。そこで本記事では、医療費の未払い金の請求方法や予防方法などを解説します。

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医療費未払いが発生する背景

医療費の未払いは、以下で挙げるような背景によって発生します。

会計時の所持金不足

医療費の未払いが発生する第一の原因は、単純に患者の所持金が会計時に不足していたというケースです。これは、「たまたまその時期(日)に経済的な余裕がなかった」という場合や、単純なお金の下ろし忘れによる所持金不足もあれば、「病院側に連絡の不備があって手持ちのお金が足りなかった」という場合もあります。

後者はたとえば、「高額の医療費がかかる治療や検査をするのに、前もって必要費用の見通しを患者に伝えていなかった」などのケースです。急な高額医療や保険外診療を行う際は、特にこうしたケースが生じやすくなります。

支払い意思・能力の欠如

医療機関を特に悩ますのが、患者側に支払いの意思や能力が欠如しているケースです。これは「単に医療費を節約したい」「病院に対して不満があるから支払いたくない」といったケースもあれば、「自分に支払い能力がないことを知っていながら受診している」というケースもあります。

後者のようなケースが成り立つのは、日本の医療機関には正当な理由がない限り患者の診療を拒否できない「応召義務」が課されていることが関係しています。このため、病院側としてはその患者に支払い能力がないと承知していても必要な診療を提供せざるを得ず、結果として未払いが発生してしまう形です。もちろん、応召義務は医療へのただ乗りを無制限に患者へ許すものではないのですが、中には「ただで医療を受けられる」とこの制度を曲解して悪用する方もいます。

参照元:医師法 第19条第1項|e-Gov

外国人患者の増加

アフターコロナに突入し、インバウンド需要が拡大する中で、日本の医療機関を受診する訪日外国人の増加に伴い、外国人の医療費未払いも増えています。外国人患者による医療費の未払いは、日本人と同様の背景に加え、言葉や文化、保険制度の違いなども関係してくるのが難しい問題です。

「日本語がわからないので、どうやって支払うのか理解できなかった」
「母国では医療費が前払いなので、うっかり支払わないまま帰ってしまった」
など、言語や文化の違いは多くの場面で問題として表れます。加えて、旅行者の場合は基本的に短期間で帰国してしまうので、後日支払ってもらったり、督促をかけたりするのが難しい場合も少なくありません。厚生労働省の調査によれば、外国人患者を受け入れている病院の約2割で医療費の未払い問題が発生しているといいます。

参照元:令和4年度医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査について(概要版)|厚生労働省
    ※
最終ページをご参照ください。

外国人患者に医療費を未払いされた場合の対応

外国人患者による医療費未払いが発生した場合の対応策のひとつとして、自治体が提供している外国人患者の医療費未払いを補填する制度の利用が挙げられます。たとえば東京都の場合は、東京都福祉保健財団が受託している「外国人未払医療費補てん制度」が該当します。制度の有無や詳細は自治体ごとに異なるため、事前によく確認しておきましょう。また、外国人の医療未払いを予防するためには、翻訳ツールを活用したり、外国語の案内文を事前に用意したりすることも大切です。

参照元:外国人未払医療費補てん事務|東京都福祉保健財団

 

医療費の未払いを回収する方法

医療費の未払いを請求する際には、まずは電話やメールなどによる穏当な手段から始め、徐々に法的措置も視野に入れた手段へと移行していくことが大切です。なお、外国人患者による未払いの場合は、外国人未払医療費補填制度などの利用も有効な手段となりますが、これについては後に解説します。

1. メール・電話で請求する

対応の初期段階や未払いが少額の場合には、メールや電話で対応するのがおすすめです。これは最も手間やコストがかからない方法であり、悪質なケースでなければ患者が素直に支払いに応じてくれると期待できます。ただし、後になって「言った/言わなかった」などのトラブルが起きないように、メールであれば送受信の記録、電話であれば録音記録をしっかり保存しておきましょう。その上で、患者にはいつまでに支払うか明言してもらうことが大切です。

2. 督促状を送付する

督促状には、請求内容や請求金額、そして支払い期限を明確に記載することが重要です。最初の段階では穏便な表現に抑えておき、それで相手が応じなかったら、2回目以降の督促状で「請求に応じない場合は法的手段を講じます」などの強い文言を使用することをおすすめします。督促状を送付する際には、それが相手の手に渡った記録が確実に残るように、内容証明郵便を利用しましょう。配達記録もオプションで付しておくと、より確実です。

3. 健康保険の強制徴収制度を利用する

上記の対策を講じても支払いが行われない場合には、健康保険の強制徴収制度を利用できます。この制度は、医療機関が一定の回収努力を行ったのに患者が支払いを拒む場合に、保険組合側で未払い金を徴収して医療機関に支払う仕組みです。しかし、この制度を利用するには厳格な要件が定められており、回収の実効性には限界があります。利用を検討する際には、事前に健康保険協会に相談し、制度の詳細を確認することが重要です。

 

医療費未払いの予防法

未払いの医療費をしっかり回収するのも大切ですが、ベストなのはそもそも未払いが起こらないようにすることです。医療費の未払いは、医療機関側で以下のような対策を講じることで減らせます。

支払い方法を多様化する

日本の医療機関では現金決済が主流ですが、未払いを防ぐには医療費の支払方法を多様化するのが効果的です。クレジットカードやデビットカード、あるいは交通系電子マネーや二次元バーコードによる支払いなどのキャッシュレス決済を導入することで、外国人患者も含めて現金不足による未払いを防げます。また、キャッシュレス決済は支払いがスムーズに済みやすいので、会計窓口の混雑緩和や、精算時の待ち時間短縮といったメリットを得ることも可能です。

未払いを防ぐために窓口での事前対策を強化する

未収金を減らすためには、窓口での事前対策も求められます。まず基本的なことですが、保険証確認の徹底が大切です。患者が保険証を忘れることは珍しくありませんが、それが何度も繰り返されるようなら、いったん全額自己負担してもらうことも検討しましょう。

また、医療費や窓口負担額に関する情報は、なるべく診療前に十分な説明を行うことも重要です。特に入院や手術など、高額の費用がかかる場合には、あらかじめ費用の目安を提示したり、連帯保証制度を活用したりすることをおすすめします。保証金(デポジット)を事前に預かるのもひとつの手です。こうした対策を徹底するためには、未払いの予防・対応マニュアルを整備し、スタッフと共有することが役立ちます。

外部業者へ管理を委託する

未払い金の回収や管理業務を外部業者へ委託するのもおすすめです。医療機関が未払い金の管理や回収業務をすべて自力で行うことには限界があります。特に、悪意をもって支払いを拒む患者に対応するのは大変な労力や慎重さを要するので、本来の業務に支障が出てしまいかねません。

ベルシステム24の未収金フォローアップサービス

ベルシステム24では豊富なコンタクトセンター経験から、法律事務に該当しない範囲で、患者さんへの入金案内やSMS送付など患者の都合に合わせた方法を検討し、医療機関職員の負担軽減・早期の未収金回収を同時に実現されています

 

まとめ

医療費の未払いは、患者側の経済的理由などで生じることも多いですが、医療機関側で適切な対策を講じることで防げる部分も大いにあります。具体的には、支払い方法の多様化や窓口での説明強化、あるいは専門家への委託などが有効です。また、外国人患者の受診が想定される医療機関では、外国語の案内文の用意など、言語や文化の違いを考慮した対策を講じておきましょう

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