Patient Centricityとは? 意味や注目の背景をわかりやすく解説!

テクノロジーの発展に伴い、医療業界では「Patient Centricity」に向けた取り組みが求められています。本記事では、Patient Centricityの意味や注目される背景、活動メリットや注意点などについて解説します。活用事例も併せてご紹介します。 

ブログ画像Patient Centricityとは_ 意味や注目の背景をわかりやすく解説!

 

Patient Centricityとは

Patient Centricityとは近年、製薬企業などヘルスケア関連企業が提唱している言葉で、「患者中心」を意味します。具体的には、患者を中心に据える、患者に焦点を当てて対応する、患者自身の判断を最大限に尊重する、といった概念を指します。似たような言葉として、「Patient Engagement」「Patient Involvement」「Patient Public Involvement」なども使われています 
 
医薬品開発において、従来は製薬企業と医療関係者が中心でしたが、薬を実際に使う患者の声を直接反映させる「Patient Centricity(患者中心主義)」の重要性が、患者へのメリット、製薬企業へのメリット両面から認識され始めています。  
 
参照元:患者の声を活かした医薬品開発 -製薬企業による Patient Centricity
    ※P6をご参照ください


Patient Centricityが注目されている背景

近年ではデジタルテクノロジーの進化によって、デジタルヘルスケアが台頭しています。患者が身に着けられるデジタル機器の適切な活用により、患者の健康状態の把握が以前と比べて容易になってきたことが、注目されている背景のひとつです。  
 
また、治療が必要になる前にリスク回避する、予防治療にも注目が集まっています。治すだけの医療ではなく、患者を中心にさまざまなニーズを組み合わせ、それに対応したサービスを展開することで、医療業界において新たなビジネスチャンスにつなげられる点も注目される要因です。  
 
参照元:Patient Centricityを今こそ形ある行動に  
    ※P4をご参照ください

 

Patient Centricityとペイシェントジャーニーの関係性

ペイシェントジャーニーとは、患者が病気に罹ってから終末期までの道のりを旅(ジャーニー)にたとえた言葉です。近年では、病気にかかる前の予防の時期を含めたり、患者の立場だけでなく医療全体としての課題も含めたりした意味で、ペイシェントジャーニーが使われることもあります。  
 
製薬企業におけるPatient Centricityは、患者の立場に立ってできることを考えるものであり、その流れからペイシェントジャーニーへの注目が高まっています。逆から見れば、ペイシェントジャーニーを考えるうえで、Patient Centricityの考え方は不可欠です 

健康経営とは何か?
ヘルスケアビジネスとは

Patient Centricity活動のメリット

製薬企業の立場からすると、はじめにも少し触れましたが、患者を中心に据え、患者の声すなわち実体験からくるものを集めることで、従来あまり行われてこなかった双方向のコミュニケーションが生まれます。そして、そこから得られた双方の課題を検討し、理解を深めることで新たな価値がもたらされ、より短期間でより良い医薬品の開発へとつなげられます。これによって生まれるメリットが、企業の社会的評価の向上や、患者からの信頼の高まり、さらには従業員のモチベーションの向上です。  
 
一方、患者の立場からすると、自らの声を通して医薬品の開発にかかわることで、経験やニーズがより反映された医薬品の供給に寄与し、社会貢献につながります。また、治験に関していえば参加しやすいものが増える、自らが参加できるものを見つけやすくなる、疑問や不安が解消される、といったメリットもあります。

 

Patient Centricityに取り組む上での注意点

取り組む上で特に重要なのが、個人情報のデータの取り扱いです。これは、どの業界のどんな取り組みでも重要事項のひとつに挙げられます。しかし、例えばカードの情報であれば、個人の立場では解約で一応の対応は可能です。ところが個人の健康に関するデータは、流出してしまうともう取り返しがつきません。

Patient Centricityがデジタルテクノロジーとのつながりが強いことは前に述べた通りですが、この活用にも注意が必要です。デジタルテクノロジーやAIに関して社会的には浸透しているものの、それらに慣れ親しんでいる世代でさえも、日常生活においてどの程度まで安全であるかには懐疑的です。まして、患者の立場で医療においてのAI活用であれば、不安を感じたとしても不思議ではありません。活用する側がAIに関して十分理解し、患者にわかりやすく説明・提案できる体制を整え、AI活用に対する患者の不安を軽減することが大切です。

また、患者が中心のPatient Centricityであるため、製薬企業としては患者のニーズにどう対応するかも重要です。どんな体験が望まれていて、それはなぜなのか、それに対しどんなサービスを提供するのかを検討します。その後の実行段階は、まず小規模で行うのがおすすめです。患者の声を取り入れながら進め、仕組みを構築することでより良い開発につながります。

参照元:患者の声を活かした医薬品開発 -製薬企業による Patient Centricity-
    ※P22をご参照ください 
参照元:Patient Centricityを今こそ形ある行動に
    ※P10をご参照ください 

 

Patient Centricity活用の事例

医療品・医薬品の開発には、治験が欠かせないプロセスです。患者の理解と協力があってこそ開発を進められます。計画段階から患者の理解を得るための取り組みや、治験参加の選択肢を広げる取り組みが行われています。治験参加負担の軽減のために、在宅でできる治験方法の提案が、その選択肢の一例です。また、治験参加者同士のわかりやすい情報共有に向けた試みも行われています。

治験・医療品の開発

医療品・医薬品の開発には、治験が欠かせないプロセスです。患者の理解と協力があってこそ開発を進められます。計画段階から患者の理解を得るための取り組みや、治験参加の選択肢を広げる取り組みが行われています。治験参加負担の軽減のために、在宅でできる治験方法の提案が、その選択肢の一例です。また、治験参加者同士のわかりやすい情報共有に向けた試みも行われています。

PSP(Patient Support Program

PSPとは、文字通り患者をサポートするプログラムのことで、Patient Centricityに基づいたサービスです。患者のQOL(クオリティオブライフ:生活の質)向上を最優先事項として、さらに患者の治療への積極的な姿勢や、心身の健康状態の変化などを目的としています。

PSPの形態はさまざまです。疾患や薬剤に関する資料の郵送サービスや、直接患者とやり取りする電話・SNSを通したサービスなどがあり、薬剤の宅配を検討するところも増えています。さらには、スマホアプリを活用して患者とのコミュニケーションをサポートする事例もあります。 運用構築もかなりの工数がかかるため、外部業者へ委託するのもおすすめです。

PSP(Patient Support Program)の実例

ここでは、様々な製薬企業からPSP業務を委託しているベルシステム24の実績をご紹介します。

ベルシステム24では看護師など有資格者を保有し36524時間体制で対応。患者一人ひとりの症状やライフステージに合わせたプログラムを構築、内容をカスタマイズし提供されています。また、医療機器を用いた手技指導や患者へ治療に関する情報提供アウトバウンドなど様々なサポートも支援されています。


なお、製薬企業へは資材に関する評価や満足度調査結果など、患者のリアルな声や要望を企業の要望に沿って連携し、Patient Centricityに基づいたサービス提供を伴走されています。

まとめ

近年、「患者中心」を意味するPatient Centricityの重要性が、製薬企業などヘルスケア関連企業で認識されてきました。企業がPatient Centricity活動に取り組むうえでは、まずそのメリットや注意点を押さえておくことが大切です。今回ご紹介した内容を参考に、ぜひ自社の取り組みにお役立てください。 

この著者の最新の記事

Patient Centricityとは? 意味や注目の背景をわかりやすく解説!
ページ上部へ戻る