医薬品の流通管理|現状や課題、解決方法について解説
- 2025.02.14
- 診断・治療
- ウェルネスの空 編集部
医薬品の流通管理は、製品ごとに異なる納品条件により、関係各社に負担になるケースが存在します。特に流通管理が必要な医薬品は増加傾向にあり、製薬企業を中心に厳密なルール遵守が求められます。本記事では、この状況の背景や業界の現状、今後の課題、そして解決策について詳しく解説していきます。複雑化する医薬品流通の実態と、効率的な管理方法の模索に迫ります。
流通管理を必要とする医薬品が増えている背景|業界の現状
近年、厳密な流通管理が必要な医薬品が増加しています。その主な理由は以下の通りです
- 新薬の複雑化
より効果的で特殊な新薬が開発され、その使用には慎重な管理が求められています。 - 安全性への注目
医薬品の副作用や誤用のリスクに対する認識が高まり、厳格な管理体制が求められています。 - 規制の強化
厚生労働省が医薬品の安全性を重視し、承認条件として流通管理を要求するケースが増えています。 - 個別化医療の進展
患者個人に合わせた治療法が普及し、それに伴い特定の条件下でのみ使用可能な医薬品が増加しています。
この状況下で、製薬企業、卸売会社、医療機関、薬局は、それぞれの立場で適切な流通管理を行う必要に迫られています。しかし、管理の複雑さが増すにつれ、各関係者の負担も増大しているのが現状です。
流通管理を必要とする医薬品
大部分の医療用医薬品は調剤薬局や医療機関が医薬品卸売会社に注文しても、問題なくそのまま納品されますが、以下のような医薬品については流通管理が必要な製剤に該当します。
・医療用麻薬や医療用覚せい剤類似物質を含んだ製剤
・厚生労働省より発売の承認条件として全例調査※ を義務付けられた製剤
・製薬企業により独自に流通規制をかけている製剤
※該当の医薬品を使用した患者全員に対して、薬剤の有効性および安全性を調査票によって確認する調査
流通管理された医薬品の納品条件
冒頭で述べた通り、流通管理が必要な医薬品の納品条件は医薬品ごとに多種多様ですので、全てを説明する事は難しいですが、主だった納品条件とは以下のようなものになります。
・製薬会社と全例調査の契約をしている医療機関からの処方である事
・処方医や所定のE-Learning等を受講し、テストに合格している事
・処方医が所定の専門医認定を取得している事
・医療機関が製薬企業からの薬剤に関する説明および適正使用同意書を取得している事
・薬剤師が所定のE-Learning等を受講し、テストに合格している事
などになり、複数の条件を満たさないと納品できない医薬品も多数存在します。
医薬品流通管理における関係各社の現状と課題
上記で説明したような医薬品については、所定の納品条件を満たさないと調剤薬局や医療機関が医薬品卸売会社から購入することが出来ませんが、このような現状下での課題もいくつか存在します。
1.医薬品卸売会社
医薬品卸売会社のデータベースには、流通管理されている医薬品を納品可能な調剤薬局や医療機関が登録されており、多くの場合はこれにより円滑な納品が可能です。しかし、データベース上で納品可能となっていない施設から注文があった場合、医薬品卸売会社は製薬企業へ都度確認を取る必要があります。製薬企業から「納品可能」との回答がなければ、納品作業に着手できません。
この確認プロセスが、医薬品卸売会社の大きな作業負担となっています。製薬企業ごとに異なる確認方法や基準への対応も必要で、担当者には高度な知識と経験が求められます。
このように、医薬品卸売会社は重要な役割を果たす一方で、その役割ゆえの課題も抱えています。今後、この負担を軽減し、より効率的な流通管理システムの構築が求められています。
2.調剤薬局
調剤薬局は、医薬品卸売会社に注文する際、単に薬品名と数量を伝えるだけでは不十分です。特に、納品規制のかかった医薬品を初めて注文する際には、特別な手続きが必要となります。納品条件を満たしているかどうかの判断ができないため、処方元医療機関や処方予定の医師などの情報を提供する必要があります。さらに、場合によっては調剤薬局が処方元医療機関に対して、医師名などの確認を行う必要もあります。これには処方元医療機関との円滑な連携が欠かせません。
このように、調剤薬局は単に薬を受け取り、患者に提供するだけでなく、複雑な流通管理プロセスの一端を担っています。この役割は、薬剤の適正使用を確保する上で重要ですが、同時に業務の複雑化と負担増加をもたらしています。
今後は、医療機関や医薬品卸売会社とのより効率的な情報共有システムの構築が課題となるでしょう。
3.医療機関
医療機関が実際に薬剤を使用できるようになるまでには、様々な事前準備が必要です。例えば、製薬企業との全例調査の契約締結、処方医師のE-Learning受講、同意書の記載など、多岐にわたる条件を満たす必要があります。
これらの条件は、医薬品の適正使用と安全性確保のために設けられていますが、同時に医療機関の業務負担を増加させる要因となっています。
さらに、納品規制のかかっている製剤は、特に適正使用の遵守や安全性について、より一層の注意が必要です。医療機関は日々の診療業務に加え、これらの特別な管理や監視も求められるのです。
このように、医療機関は医薬品の適正使用を確保する上で重要な役割を果たす一方で、その役割ゆえの負担も大きくなっています。今後は、これらの手続きや管理をより効率的に行える仕組みづくりが課題となるでしょう。
4.製薬企業
製薬企業は、流通管理が必要な医薬品の管理において中心的な役割を担っており、それに伴う独自の課題に直面しています。
まず、全例調査の契約締結状況やE-Learningの受講状況など、納品条件に関わる最新情報は製薬企業のみが把握しています。そのため、全国の医薬品卸売会社から日々納入可否の確認が寄せられ、これらの問い合わせに対応する専門部門の設置が必要となっています。 さらに、医療機関や調剤薬局が稼働している限り、大型連休や土曜日でも確認依頼が入るため、常時対応可能な体制の構築が求められます。これは人員リソースの確保や作業ノウハウの構築という新たな課題をもたらしています。
このように、製薬企業は医薬品の適正使用と安全性確保のために重要な役割を果たす一方で、その責任は大きな業務負担となっています。今後は、これらの確認作業や情報管理をより効率的に行える仕組みづくりが課題となるでしょう。 また、関係各社との円滑な情報共有システムの構築も、製薬企業にとって重要な課題の一つとなっています。
医薬品流通管理の外部委託
上記で説明した通り、医薬品の流通管理における課題などは現状でも複数ありますが、納品規制を緩和することは不可能です。
そこで医薬品流通管理の専門知識とノウハウ、専用システムを所有している企業への外部委託などが現在は多く行われています。
ベルシステム24では製薬企業より医薬品流通管理の外部委託を古くより受けており、医薬品流通管理専門のチームが一丸となって、医薬品卸売会社からの納品可否確認や医療機関、調剤薬局からの問い合わせ対応などを多数実施しています。またこれまでの経験より担当しているチーム全員が医薬品流通の仕組みを十分に理解しており、委託先の製薬企業へより効果的、効率的な作業スキームの提案なども都度実施しています。
また、医薬品流通管理専門の汎用システムも保有しており、納品規制のかかる医薬品を発売予定の製薬企業へも、どのような納品条件でも対応できるシステムになっており、スムーズな業務体制の構築、医薬品卸売会社への早期回答が可能のようです。
ベルシステム24では医薬品流通管理専門のチームの豊富なノウハウにより、製薬企業に対してもコンサルティング要素を持たせた業務効率化や負担軽減策などを都度提案しており、スムーズな納入作業を構築することが可能なため、製薬企業だけではなく、医薬品の納品に関わる卸売会社から調剤薬局、医療機関に至るまでトータルで負担軽減につながるでしょう。
まとめ
医薬品の流通管理は、安全性と適正使用を確保する上で不可欠ですが、関係各社に大きな負担をもたらしています。医薬品卸売会社、調剤薬局、医療機関、製薬企業それぞれが直面する課題は、効率的な情報共有と管理システムの構築によって軽減できる可能性があります。
ベルシステム24の豊富なノウハウによる医薬品流通管理の外部委託により、全体として負担軽減と速やかな医薬品物流のシステムが構築されることで、ひいては使用される患者およびご家族の方への医療貢献が期待されます。
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