コラボヘルスとは? メリットや課題、推進方法、事例を紹介

コラボヘルスは企業と保険者が連携し、従業員やその家族の健康づくりを推進する取り組みです。健康増進や労働災害防止効果などが期待されています。
本記事では、コラボヘルスの概要や推進する際のポイント、実施例などについて詳しく解説します。

コラボヘルスとは? メリットや課題、推進方法、事例を紹介

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コラボヘルスとは

コラボヘルスとは、保険者(健康保険組合など)と事業者(企業)が連携して従業員の健康づくりを支援することです。

コラボヘルスは良好な職場環境のもと、従業員とその家族の健康を増進することが大きな目的です。これにより労働災害の防止や生産性の向上も期待されています。

重要なポイントは保険者と企業の役割分担です。保険者は保険事業の実施(データヘルスの集積)を、企業は職場環境の整備(健康経営®の実践)が求められます。

データヘルスとは平成27年度から実施されている、健康医療情報の電子データを分析した事業です。健康保険組合などが実施した健康診断の結果などをもちいてデータ分析し、保健指導や予防・健康づくりに活用します。

健康経営とは企業の課題として従業員の健康増進に取り組むスキームです。従業員の健康が生産性や企業価値を向上させるという考え方の浸透により注目されるようになりました。

コラボヘルスは保険者と企業が連携し、それぞれがデータヘルスと健康経営の役割を果たすことによって機能します。厚生労働省が推進しており、保険者と企業が関心を寄せる施策です。

※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

厚生労働省「コラボヘルスガイドライン」

デジタルヘルスとは
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コラボヘルス実施のメリット

コラボヘルスの実施には保険者、企業、従業員それぞれにメリットがあります。

まず保険者は、コラボヘルスで企業との連携が行われるため、企業を通して従業員(被保険者)に健康指導をしやすくなります。医療費の負担による保険者の財政が厳しさを増す中、コラボヘルスによって医療費の削減が見込めるのも大きなメリットです。

企業は健康的に働ける従業員をより多く雇用し続けられることになり、人手不足や業務効率の課題を解消できます。また「コラボヘルスで健康的な職場を整えている」という事実は、社のブランドイメージ向上効果が見込める要素です。

従業員は健康的に働ける環境が手に入ります。体調不良による欠勤や休職などを減らせるようになり、生産性が向上することや自身が払う医療費を削減できることも大きなメリットです。

コラボヘルスが注目される背景

コラボヘルスが注目される背景には、主に3つの理由があります。

ひとつは特定健康診査、特定保健指導制度の導入です。生活習慣病予防を目的とした特定健康診査でハイリスク診断が出ると特定保健指導が行われます。これにより、労働安全衛生法上の健診とあわせて、現役世代の健診に対して企業と保険者の双方が関与する体制が構築されました。

また、こうした事業は保険者機能のひとつですが、これまで理念的・抽象的な機能にとどまっている側面がありました。しかし近年、レセプト(診療報酬明細書)の電子化がほぼ100%進んだことで、電子化された健診情報とレセプトを活用した分析や活動が可能になりました。これがデータヘルスの発想であり、保険者機能を現実化するためのいわば基本的なインフラが整備されてきたわけです。

さらに、保険者が担当するデータヘルス推進のためには企業との連携が不可欠です。企業にデータヘルスの意義や人材、資金について理解を深めてもらう必要があります。同時に企業も健康経営のために保険者との積極的な連携を意識しなくてはいけません。結果として双方が協力し合うことになり、コラボヘルスへの注目が高まりました。

コラボヘルスにおける課題

コラボヘルスの推進には取り組むべき課題があります。企業、健康保険組合、従業員の立場でそれぞれ異なる課題があり、対応が求められています。

企業の課題

日本では労働者の平均年齢の上昇や生産年齢人口の減少が懸念されています。企業を継続的に成長させていくためには人材が重要ですが、その人材が健康的に長く働ける環境が求められます。

高齢化社会のため、今後は若年層の減少が予想されます。効果的な健康経営を通し、職場環境の改善や働き方改革の推進など、人材確保に向けた施策が必要です。同時に、今いる人材の健康促進や疾病の予防を行い、長く活躍してもらう必要もあります。

健康保険組合の課題

健康保険組合は財政が厳しい状況で運営しています。一方で、企業や従業員からは保険者機能をより強化するよう期待されているのも事実です。財政が不足する中でどのような対応をするかが課題になります。

無駄がないよう、加入者の細かいニーズを把握した上での対応や、予防・健康づくりの専門家に意見を求めるとともに、自身が専門家集団として生まれ変わるなどの施策が必要です。

従業員の課題

「不安なときに医療機関へ行けばよい」「健康診断を受ける時間がない」などの理由で健康診断を受けない従業員もおり、予防・健康促進に役立つ健康診断の意義が薄れてしまっています。また、健康や医療に対して誤った知識を持っている可能性もあります。

従業員の課題は健康への理解を深めることです。健康診断の意義、医療や健康に対するリテラシーの強化が求められます。

コラボヘルスの推進方法

コラボヘルスを推進するためには、課題の解決とともに運用しやすいシステム構築が重要です。四つのステップを意識しましょう。

第一に企業、健康保険組合、従業員ごとの課題や現状を可視化します。やみくもに新しい施策に取り組む前に、既存事業の実施状況を把握することが大切です。法定健診や特定保健指導の実施率、休職者の人数など具体的な数値で把握します。

第二に「健康白書」を作成しましょう。企業が持つデータ(出欠日数、ストレスチェック、残業時間など)、健康保険組合が持つデータ(健診結果、傷病手当金、医療費など)から作成します。属性ごとの表やグラフにすれば健康状態、生活習慣、労働状況が分かりやすく、従業員に配布すれば啓発につなげられる効果も期待できる有益なツールです。

第三に目標を設定します。健康白書から「現状で自社に必要な健康事業は何か」が浮かび上がるはずです。それをもとに目標を設定しましょう。

第四はPDCAサイクルを回すことです。P(計画)で課題に応じた健康事業を立案し、D(実行)で健康事業をスタートしましょう。C(評価)では健康事業の効果をチェックし、必要であればA(改善)で今後の目標や計画を修正し、よりよい結果を目指します。

コラボヘルス推進のポイント

コラボヘルスの推進で気を付けたいポイントは、立場による目的の違いや個人情報の取り扱い、従業員への啓発です。

企業は健康経営で従業員の健康促進や生産性の向上をめざす立場です。一方、保険者はスムーズな保健事業の実施と医療費の適正化をめざしています。両者の目的を理解し合い、協力できる部分があれば協働の検討も視野に入れるべきです。

健康診断の結果は個人情報であることにも注意しましょう。従業員の中には自分の健康状態を第三者に知られたくない人もいます。そもそも健康診断の結果は要配慮個人情報であり、守秘義務を遵守する必要があり、正当な目的以外の利用が禁止されています。

健康経営に無関心な従業員への啓発も取り入れましょう。健康経営の重要性を解くのはもちろんですが、「健康インセンティブ」のようなポイント制度を採用して従業員のモチベーションを上げるのも効果が期待できます。

コラボヘルス実施の事例

コラボヘルスの導入例に花王グループの「健康宣言」があります。花王グループでは平成20年から自社の健康開発推進部と健康保険組合が連携し、健康づくりに積極的な活動を続けてきました。

健康づくりでは「生活習慣病への取り組み」「メンタルヘルスへの取り組み」「禁煙への取り組み」「がんへの取り組み」「女性の健康への取り組み」の5項目があり、PDCAサイクルを回しています。

健康づくりの取り組みで「QUPiOポイント」が獲得できるようにしたことも大きな注目点です。健康診断に問題がなければ300ポイント、タバコを吸わなければ300ポイントというように健康への取り組みを「見える化」しました。従業員は楽しみながら健康経営に参加できます。

コラボヘルスの推進には企業、保険者、従業員それぞれの意識付けが必要ですが、花王グループの取り組みはそれを体現しています。

花王における 事業主と健保とのコラボヘルスの推進について

まとめ

コラボヘルスは従業員の健康促進のほか、生産性向上やイメージアップ、医療費の適正化など、企業や保険者にとっても多くのメリットがあります。

推進のためにはそれぞれの立場での課題解決が必要です。自社での戦略立案はもちろん、ときには専門家の意見を求めながら、解決を目指しましょう。


この記事の監修医師
甲斐沼 孟先生( TOTO関西支社健康管理室産業医)

コラボヘルスとは、健康保険組合などの保険者と事業主が、それぞれの役割の責任を果たしながら連携して、従業員の健康づくりを推進することを指しています。
企業などがコラボヘルスを本格的に推進する上では、産業医や保健師などの産業保健スタッフとの連携が非常に重要であり、従業員に対する健康保持増進策や生活習慣病を罹患している者などに対する重症化予防のための対処策を講じることが重要なポイントとなります。

メディコレ医師:甲斐沼 孟 様

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