ヘルスケア事業領域におけるDX化とは?特徴や必要性を解説

深刻な高齢化が進む日本において、今後ヘルスケア事業の需要も増してくるのは明らかです。そしてその際に期待されているのが、ICTを活用した新たなヘルスケアサービスの提供や業務効率化です。

そこで本記事では、ヘルスケア事業領域におけるDXの特徴を紹介するとともに、その必要性について解説していきます。

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DXとは

「DX」とは、「Digital Transformation(デジタル・トランスフォーメーション)」の略で、デジタル技術を用いることで生活やビジネスモデルなどが変容していくことを指します。DXの定義には曖昧な部分があるため、単なる「IT化」ないしは「デジタル化」と混同されることもありますが、厳密には異なります。IT化の目的が一般的に「業務を効率化すること」にあるのに対し、DXの本質とは「デジタル技術によってサービスを変革すること」です。

これはユーザー目線から言えば、「デジタルを通してまったく新しい体験を提供してくれること」を意味します。例えばAmazonは、豊富な商品ラインナップと使いやすいUI、迅速な配送体制によって、私たちのショッピング体験を従来の形態からまったく別のものに変化させました。それは単に買い物が便利になったという以上の根本的な変革です。つまりDXとは「IT化のさらにその先にあるイノベーションである」と言えます。

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ヘルスケア事業のDX化

現在DXは業界を問わず社会全体で進んでおり、それはヘルスケア事業にも及んでいます。とりわけ今日では医療現場の疲弊や、超高齢社会の進行、さらには新型コロナウィルスの世界的パンデミックによって医療体制は逼迫しており、医療データのさらなる利活用やAIの導入、オンライン診療の実施などICTを活用した新しいヘルスケア施策が模索されています。以下では、ヘルスケア事業におけるDXの目的について解説していきます。

①蓄積データの活用

現在の医療業界においては、個人の医療・健康データである「パーソナル・ヘルス・レコード(PHR)」の重要性を指摘する声が高まっています。PHRは、出産・子育て支援を始め、疾病・介護予防や生活習慣病予防、医療・介護連携に関する新たなサービスモデルの開発、地域やサービスを横断してデータを管理・活用できるプラットフォームの開発などに役立つとされています。

ヘルスケア事業におけるDXは、このPHRの蓄積および活用を可能にします。例えば、患者の運動データや介護施設の健康状態管理データなどを活用すれば、生活習慣病など注意すべき病気の傾向や対策を立案していけるのです。実際の治療においても、患者個人ごとにパーソナライズされた処置ができるようになるでしょう。また、保険会社が患者のより詳細な健康状態を把握可能になることで、病気リスクをより正確に評価し、保険価格を設定する際の指標にするといった使い方も考えられます。

こうしたPHRの蓄積・活用は、フィットネスアプリを始めとする健康・ヘルスケア関係のアプリ開発などに応用可能です。現代の日本国民は一人一台スマートフォンを持っていると言っても過言ではないため、モバイル・ヘルスケアは今後のヘルスケア事業において最注目の分野と言えます。

②人材不足解消と業務効率化

ヘルスケア業界は、人材不足が慢性的な課題である業界のため、DXを進めることで工数削減などの業務効率化が大きく求められる分野です。介護労働安定センターが公表している「令和元年度介護労働実態調査」によれば、介護事業者の56.7%が「良質な人材の確保」に課題を感じていると報告されています。

多くの介護施設では、業務や要介護者に関する記録を手書きやExcelなどで作っており、それが作業負担になっている場合が多々あります。例えば、これらの作業をペーパーレス化したり、業務効率化を可能にするITサービスを導入したりすることで、介護者の負担を軽減できます。また、見守り支援ロボットを導入することで、夜間見回りの業務を大幅に削減しつつ重大事故の発生を抑制することも可能です。こうしたITソリューションは、作業者の業務負担や人材不足による悪影響を抑え、「介護」という本質的業務により専念していける環境を作りだします。

ヘルスケア事業のDX化が必要な理由

続いて、ヘルスケア事業においてDXがなぜ必要なのか、その背景について解説していきます。

①少子高齢化の加速

ヘルスケア事業にDXが必要な第一の理由は、少子高齢化の加速による影響です。内閣府の発表によれば、令和元年時点において日本の65歳以上人口は、総人口の28.4%にも達しています。しかも、この数字は今後さらに悪化し続け、2065年には38.4%、つまり国民の約2.6人に1人が65歳以上になる見込みです。

高齢化に伴って、患者数や要介護者もまた増加していくことが予想されます。こうした社会情勢のなか、日頃からの健康管理による病気予防や、より効率的な医療体制の構築をもたらすDXが求められているのです。

②人材不足の加速

先にも触れた通り、ヘルスケア業界は人材が不足しており、それを解消する手段としてもDXは期待を寄せられています。日本全体で高齢化が進行するということは、ヘルスケア業界でも高齢化が進行するということです。実際、現在でもすでに高齢者が高齢者を介護する「老老介護」と呼ばれる状態が増えつつあり、ヘルスケア業界は早急に業務を効率化し、サービスの供給量を増やすことが求められています。つまりDXは、高齢化によって患者や要介護者が増える一方、不足している医療・介護従事者のサポートをする手段として期待されているのです。

③データ活用が不十分

データ活用が不十分な状況にあることも、ヘルスケア業界のDXが急がれる理由です。とりわけ業界全体の傾向として介護施設のデータ活用は不足がちであり、傾向や統計データを計測しにくいという特徴があります。患者や要介護者の健康状態などは、重要な個人情報でもあるため、その扱いが難しいという側面はあるかもしれません。しかし、少子高齢化・人材不足といった社会問題に備えつつ、患者の健康状況を正確に把握するためには、DX化を目指してデータを活用することは不可欠です。

④QOL改善が課題

高齢化が進行するなか、いかにQOLを高く維持するかも重要になっています。QOLとは「Quality Of Life(クオリティ・オブ・ライフ)」の略で、「生活の質」や「人生の質」と訳されます。QOLは、単に病気にかかっていなければそれでいいというものではなく、「身体的・心理的・社会的に満足できる状態であることが大切」という考え方です。

そして、高齢化のなかにあっても社会の活力を維持するには、高齢者のQOLを維持することが欠かせません。このような問題意識において、DXによるデータ活用や統計情報の活用はより重要になってきています。例えば、個々の高齢者の生活に合わせたケアプランを策定するAIの開発なども、現在研究が進んでいます。

⑤予防医学への応用

データ分析により、予防医学など同業界における違うドメインへの転換や応用も可能になります。少子高齢化が進行し、社会保障費が現役世代に重くのしかかってくるなか、医療費を節約するための予防的アプローチがますます重要になってくるでしょう。業界横断的なデータ活用体制の構築が進むことにより、日頃の予防的ケアから実際の治療、リハビリまで、一貫したヘルスケアが可能になることも期待されています。

まとめ

少子高齢化という社会問題や、人材不足という業界特有の問題を抱えるなか、ヘルスケア業界におけるDXの必要性はますます高まっています。ヘルスケア業界でのDXに取り組む際は、業界に特化た実績のある企業に相談するということも手段の一つです。

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