ヘルステックビジネスとは?市場規模や事例、ビジネスモデルを解説

医療や介護の現場における課題解決の取り組みにあわせて、ヘルステックという概念が今注目されています。今回はヘルステックの概要とそれを活用したビジネスが拡大している要因、そして実際にヘルステックビジネスが活用されている場面について紹介します。

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ヘルステックとは

医療改革の新しいコンセプトを指す言葉である「ヘルステック」とは、ヘルス(Health)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語です。
そのコンセプトの中身は、医療や介護の現場や人々の健康管理における、AIやウェアラブルデバイスといった最新テクノロジーの活用です。医療分野の抱える様々な課題を解決する手段として、近年このヘルステックが注目されています。

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ヘルステックビジネスが注目されている理由

2025年を迎えると、日本は国民の約4人に1人が75歳以上の後期高齢者になるという、超高齢化社会に突入します。労働人口の減少により医療や介護の負担が増し、それを補うための保険料や医療費の増大も予測されます。また都市部への人口集中による地方の慢性的な医療従事者の不足なども懸念されています。費用の負担の増大や医療格差といった問題を改善する手段として、ヘルステックビジネスが期待されているのです。

ICT関連技術の発展も、ヘルステックビジネス拡大の一因を担っています。スマートフォンなどの端末を利用した健康管理アプリケーションを始め、近年ではウェアラブルデバイスの普及によって、身体の状態をより詳細に、自分で調べることができるようになりました。

各端末で調べた情報をネット上でクラウド管理できる仕組みが整備されれば、人々は身体の状態をいつでも総合的に把握することができるようになります。クラウドで患者の健康状態を管理することで、医療サービスの担い手も迅速で効率的な医療の提供を行なえるようになることでしょう。

ヘルステックの技術は予防医療にも活用できます。個々人が病気の予防や生活習慣の見直しといった健康管理の意識を高めることが、結果的に医療費の負担抑制や労働力不足の防止に繋がります。

ヘルステックビジネスの市場規模

株式会社富士経済グループの発表によると、ヘルステック・健康ソリューション関連における2022年の国内市場は、3,083億円と予測されています。これは2017年と比べて50.0%の増加です。

ヘルスケア全般では、国民の健康意識の高まりと企業における働き方改革などの影響により、2016年に約25兆円であったヘルスケア市場が2025年には約33兆円と、ヘルスケア市場の需要も年々高まっています。そのためヘルステックビジネスの市場規模は、今後も拡大していくと予測されます。
(参照元:https://www.fuji-keizai.co.jp/press/detail.html?cid=19009&view_type=1
(参照元:https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/shin_jigyo/pdf/001_03_00.pdf

ヘルステックに関する新たなビジネスモデル

ヘルステックを活用した新たなビジネスモデルには、次のようなものがあります。

病気予防×ウェアラブルデバイス

スマートフォンやウェアラブルデバイスを利用することで、様々な検査が可能です。

一例を挙げると、KDDIの「スマホdeドック」は、専用の在宅検査キットを利用して血液検査を受けることで、健康チェックができる医療サービスです。検査結果はメールで送られてくるので、手持ちのスマートフォンやパソコンで内容を確認できます。血液採取から確認まで自宅にいながら行えるので、医療機関が遠くて検査を諦めていたという方でも気軽に利用できます。

日々の健康管理には、血圧管理も重要です。2022年、NTTデータはスマートフォンのカメラを使って、血圧や心拍数などの推定値を算出するサービスを始める、と発表しました。スマートフォンで自分の顔を撮影した画像から推定した血液量を基に、血圧や心拍数を割り出す技術が用いられています。

また、ウェアラブルデバイスで血圧を測定する手段として、サムスンが提供する「Samsung Health Monitor」があります。これは、スマートウォッチと連動した血圧測定アプリです。1ヶ月に1度は実際の血圧計で測定を行って誤差を調整する必要がありますが、それを済ませた後はいつでもスマートウォッチで血圧の測定が可能です。

スマートフォンやウェアラブルデバイスを活用した医療サービスは、ただ検査をするだけでなく、日々調べたバイタルの状態をデータとして蓄積できます。
データを基に体調の変化や身体の異常を早期に察知できれば、生活習慣の改善による病気予防や早期の治療が可能です。

診療×AI

診療においてもヘルステックの活用で様々な恩恵が受けられます。

救急相談サービスにおいてAIを導入すれば、自動応答システムが患者に応答し質問を行うことで、症状や緊急性などを判断してくれます。症状の軽いものについてはそのままAIが対応を案内し、緊急性が高いと判断された場合は直接人間が対応するなどして、救急相談対応者の負担を軽減できます。

医療の現場においてもヘルステックは活躍します。
AIを導入した画像診断では、ディープラーニング技術を用いて医療機器でスキャンした画像を迅速に解析し、異常の早期発見や異常発生時の詳しい情報を診断します。

医療現場で通信環境のクラウド化が進めば、患者の情報や医療記録をデジタル化して管理できるようになります。
医師が問診票などに情報を記入したり紙の書類を管理したりする手間と時間を短縮できるので、診察の際の労力が軽減します。また電子化されたデータを医療機関の間で共有できるようになれば、再検査の手間や多重投薬といった事故を防げます。緊急時に別の病院が対応を行った際も、すぐに患者の情報を把握できるので、迅速に適切な治療を施せます。

新型コロナウイルスの流行により、コロナの感染防止のため対面での診断を受けることが難しくなりました。しかしオンライン診療を利用すれば、感染の心配なく診察が可能になります。直接来院しなくても離れた場所で診断が受けられるという利便性もあり、オンライン診療は注目されています。

服薬×デジタル管理

服薬もデジタル環境で管理できます。

日本薬剤師会がリリースした「eお薬手帳」は処方された薬の詳細、アレルギーや副作用の経験の有無などの情報を記録しておく「お薬手帳」をデジタル化したアプリケーションです。スマホ1台で家族全員の情報を管理できます。災害などの緊急時もスマホがあれば、医療従事者が情報を参照できるので、より的確な対処が可能です。
情報はクラウドに保管されているので、手持ちのスマホを紛失しても別の端末から情報を参照できます。

服用する薬そのものにも、デジタルデバイスの活用が進んでいます。
大塚製薬が提供する「デジタルメディスン」は、米国で承認された医薬品です。薬の中に埋め込んだ極小のセンサーによって服薬状況を検知する技術を用いて、薬の飲み忘れを防いでくれます。
また、有効成分をナノカプセル化し、皮膚から浸透させるDDS(Drug Delivery System)を利用すれば、注射針を必要とせずに体内に効率よく浸透させられるので、副作用の低減に貢献できます。ナノエッグでは、肌に塗る・貼るだけのワクチンの開発や皮膚疾患予防の外用薬開発などの応用研究が行われています。

ヘルスケア×スマホアプリ

人々の健康意識の高まりにあわせて、様々なヘルスケアに関わるスマートフォンアプリがリリースされています。日々の生活習慣や毎日の歩数や消費カロリーなどを記録するこれらのアプリを利用すれば、ユーザーが自主的に健康管理を行なえます。日々のデータを見て改善状況を把握できれば、モチベーションのアップに繋がることでしょう。万が一医者にかかるときも、端末から必要な情報を提供できます。

介護×ロボット

需要が叫ばれつつも人材の不足が問題となっている介護業界において、昨今注目されているのが介護支援ロボットです。

介護支援ロボットには、移乗や入浴といった介護業務を直接支援する「介護支援型」、要介護者の行動をサポートし自立を助ける「自立支援型」、要介護者とコミュニケーションを図ると共に様子を見守るセキュリティの役目も果たす「コミュニケーション・セキュリティ型」の3種類があります。

ロボットが力作業などを担当して職員の負担を軽減することで、少しでも人が働きやすい環境を作れます。

まとめ

ヘルステックが活躍する舞台は、普段の健康管理から実際の医療の現場の最新技術まで多岐に渡ります。人々の健康意識の高まりに伴い、ヘルステックビジネスの需要とそれを活用すべき場面は日々増えています。たとえば、毎日の食事内容に気を付けることも健康維持には欠かせません。専門家の指導を受けることで大きく改善できる可能性があります。

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