企業の健康診断における項目一覧! あなたの企業に合ったものはどれ?

会社の健康診断は労働安全衛生法で定められており、社員全員に対して受けさせる義務があります。また、職種によって受けるべき健康診断の項目が異なり、確認が必要です。
本記事では、会社の職種や業務ごとの受けるべき健康診断の種類、項目を解説しています。

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会社には健康診断を受けさせる義務がある

会社には、社員に健康診断を受けさせる義務があります。なぜなら、「会社は、社員を安全で健康に働くことができるよう配慮しなければならない」という「安全配慮義務」が定められているからです。

安全配慮義務とは、以下の労働契約法の第5条に定められています。

  • 労働契約法 第5条(労働者の安全への配慮) 条文
    使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
    (引用元:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=73aa9536&dataType=0&pageNo=1
    一方、社員に健康診断を受けさせていない会社には、以下の労働安全衛生法による50万円以下の罰則もあります。
  • 労働安全衛生法 第66条 (健康診断)
    事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない。

また、健康診断は会社規模にかかわらず実施しなければなりません。社員が少なくても、1年に一度は健康診断を受けさせ、費用も会社負担になります。

会社のために毎日精一杯働いている社員は、体調管理もままならない日々を送っているかもしれません。特に若年だと、健康診断は必要ないと考えている社員も多い傾向があります。また、30代から増えてくる生活習慣病は初期の自覚症状がわかりにくいことが多く、健康診断で判明することが少なくありません。健康診断は、社員全員に受けさせることが望まれます。

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あなたの企業に合った健康診断はどれ?

会社が行うべき健康診断は、大きく2つに分けられます。職種に関係なく、すべての会社が定期的に行う「一般健康診断」と、有害業務を行う労働者に対する「特殊健康診断」です。ここでは、それぞれの健康診断の対象者を解説します。

一般健康診断の種類

一般健康診断は以下の5種類です。

  • 雇入時の健康診断
  • 定期健康診断
  • 特定業務従事者の健康診断
  • 海外派遣労働者の健康診断
  • 給食従業員の検便

ここでは、上記の中から主な3つの項目「雇入時の健康診断」「定期健康診断」「特定業務従事者の健康診断」を解説します。

  • 雇入時の健康診断
    実施時期:雇い入れたとき
    対象者:常時使用する労働者
  • 定期健康診断
    実施時期:1年以内ごとに1回
    対象者:(特定業務従事者を除いた)常時使用する労働者
  • 特定業務従事者の健康診断
    実施時期:以下の業務に配置替えのとき、6ヶ月以内ごとに1回
    対象者:労働安全衛生規則第13条第1項第2号に掲げる業務に常時従事する労働者
    対象の業務が数多く分かれているのでここでは一部を記します。
    多量の高熱物体を取り扱う業務および著しく暑熱な場所における業務
    重量物の取扱い等重激な業務
    深夜業を含む業務 など
    (参照元:労働安全衛生規則第13条第1項第2号とは

一般健康診断の対象者である「常時使用する労働者」とは、雇用期間の定めがない正社員は全員が対象者です。加えて、正社員の週所定労働時間の3/4以上働く労働者も契約社員、アルバイト、パートなどの雇用形態にかかわらず対象になります。

一方でアルバイトなど、労働時間が1/2以上3/4未満の労働者に対しては、義務ではないものの、健康診断の実施が望ましいとされています。

特殊健康診断の種類

特殊健康診断とは、法令により定められた有害業務に従事する労働者が対象です。健康上、有害な影響を未然に防ぐために、6カ月以内に1回行わなければいけません。

特殊健康診断を受けなければならない対象者は、以下の7つの業務に携わる労働者です。

  • 高気圧業務
    高圧下では身体への影響が大きいため、特殊健康診断が必要です。
    対象者:高圧業務や潜水業務
  • 電離放射線業務
    通常業務に比べ電離放射線を多く浴びるため、放射線による健康被害がないか確認します。
    対象者:放射線業務を行い管理区域に立ち入る労働者
  • 特定化学物質業務
    第1類物質、第2類物質、第3類物質という区分に分けられる特定化学物質は、発がん性のある特定管理物質など、健康への影響が心配される物質です。
    対象者:特定化学物質の取り扱いに携わる労働者
  • 石綿業務
    古くから建材として使用されていた石綿は、発がん性があることが発覚し2011年以降は製造中止になりました。しかし、石綿が含まれる古い建物の取り壊し業務は健康被害が心配されることから、特殊健康診断が必要です。
    対象者:石綿の粉塵が飛散する場所で業務を行う労働者や、過去にその業務を行ったことのある労働者
  • 鉛業務
    鉛が体内に蓄積されると、酵素の働きが阻害され健康に影響を及ぼします。鉛を取り扱う労働者は、健康被害の予防が必要です。
    対象者:鉛を含む製品の製造など、鉛中毒予防規則に定められた業務を行う労働者
  • 四アルキル鉛業務
    四アルキル鉛には神経毒があります。現在はほとんど扱われていませんが、過去にはガソリンのアンチノック剤として使われていました。
    対象者:四アルキル鉛を取り扱う業務に携わる労働者
  • 有機溶剤業務
    ほかの物質を溶かす性質の有機溶剤は、液体ではあるものの揮発し、蒸気になりやすい化合物です。呼吸することで体内に取り込まれやすいため、健康被害が心配されます。
    対象者:屋内などで有機溶剤を取り扱う労働者

各健康診断の項目

ここでは、「一般健康診断」「特殊健康診断」における検査項目を解説します。

一般健康診断の検査項目

  • 「雇入時健康診断」の検査項目は以下の通りです。
  1. 既往歴及び業務歴の調査
  2. 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  3. 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
  4. 胸部エックス線検査
  5. 血圧の測定
  6. 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
  7. 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)
  8. 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
  9. 血糖検査
  10. 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
  11. 心電図検査
  • 「定期健康診断」の検査項目は以下の通りです。
  1. 既往歴及び業務歴の調査
  2. 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  3. 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
  4. 胸部エックス線検査及び喀痰検査
  5. 血圧の測定
  6. 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
  7. 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)
  8. 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
  9. 血糖検査
  10. 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
  11. 心電図検査

雇入時健康診断と異なるのは、4 胸部エックス線検査が4 胸部エックス線検査及び喀痰検査となっている点のみです。なお、定期健康診断における3・4・6・7・8・9・11の項目では、年齢による判断と、既往歴や自覚症状、他覚症状から「医師が必要でないと認める」判断で、省略できることが認められています。また、個人の健康診断結果は5年間保存しなければなりません。

「特定業務従事者の健康診断」の検査項目は定期健康診断と同じです。ただし、前回の健康診断で6・7・8・9・11の項目の診断を受けている場合は、医師の判断でその項目を省略できます。

特殊健康診断の検査項目

特殊健康診断の検査は、労働安全衛生法第66条第2項、3項の政令で定める有害業務に対して6カ月以内ごとに1回行われます。

特殊健康診断における検査項目は、それぞれ対象の業務ごとに特別な検査が細かく定められています。以下にそれぞれの業務で特徴がある検査を記します。

  • 高気圧業務
    関節、腰、下肢の痛み、耳鳴りなどの自覚症状あるいは他覚症状の有無
    四肢の運動機能の検査
    鼓膜と聴力の検査
    肺活量測定
  • 電離放射線業務
    被ばく歴の有無
    白血球の数と白血球百分率の検査
    白内障に関する検査
    皮膚検査
  • 特定化学物質業務
    化学物質により細分化されています。以下に例を示します。
    アクリルアミド…手足のしびれ、歩行障害、発汗異常などの自覚症状あるいは他覚症状の有無
    コールタール…食欲不振、せき、たん、目の痛みなどの自覚症状あるいは他覚症状の有無
  • 石綿業務
    せき、たん、息切れ、胸痛などの自覚症状あるいは他覚症状の有無
    胸部のX線撮影
  • 鉛業務
    血液内の鉛の量
    尿に含まれるデルタアミノレブリン酸量
  • 四アルキル鉛業務
    血液内の鉛の量
    尿に含まれるデルタアミノレブリン酸量
  • 有機溶剤業務
    有機溶剤代謝物の有無
    肝機能測定
    貧血の検査

また、既往歴、業務歴の調査も行われます。一定の特定化学物質業務および石綿業務などは、過去に従事した履歴がある労働者も検査対象です。さらに従事しなくなってからも検査しなければなりません。

特殊健康診断の結果は、一般健康診断と同じく5年間保存しますが、特別管理物質や電離放射線の取り扱い業務は30年、石綿の取り扱いは40年の保存が義務付けられています。

まとめ

会社には、社員に対して安全や健康に配慮しなければならない「安全配慮義務」が労働契約法で定められています。その一環として労働安全衛生法で健康診断を受けさせることも義務付けられ、行わない場合は罰金が科せられることもあるのです。

会社が行うべき健康診断は、「一般健康診断」と「特殊健康診断」に分かれており、労働者が行う業務により検査項目も異なります。

健康診断の対象者は、社員全員ですが、働く時間の長さによって契約社員やパート、アルバイトにも実施義務があります。

社員の安全と健康を目指すには、それぞれの職種に該当する健康診断が必要です。会社のために、社員のために、対象になる健康診断を必ず実施しましょう。

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