介護DXとは? 事例を中心にメリットや課題について解説!
- 2023.03.20
- 予後・リハビリ・介護
- ウェルネスの空 編集部
近年、さまざまな業界で導入が進んでいるDX。介護業界も例外ではなく、介護ロボットや管理システムなどを取り入れる施設が増えています。この記事では、介護DXの概要について触れながら、具体的な事例や導入のメリット、克服すべき課題などを紹介します。介護現場での業務効率化の方法を探している担当者の方は、どうぞご覧ください。
介護DXの定義
「DX(デジタルトランスフォーメーション)」とは、最新のデジタル技術を活用し、業務プロセスや製品・サービスの質、ビジネスモデルなどを改善し、新たな価値を生み出すことです。
近年、新型コロナウイルス影響によってリモートワークが普及したことや、国がDXの推進を目指す文書を発表したことなどによって、多くの企業でDX化が促進されました。最初はDXと相性がよい業種に限られていましたが、近年は業務のデジタル化が難しいといわれていた業界にも徐々に普及が進んでおり、建設業界や介護業界などでもDXの導入が進んでいます。
介護DXとは、介護現場にデジタル技術やデータを活用したシステムなどを取り入れ、介護業務のあり方を変革することです。日本は間もなく、2025年問題と呼ばれる超少子高齢化の時代に突入します。令和2年(2020年)国勢調査によると、65 歳以上の人口が総人口に占める割合は28.6%と、世界でも最も高い水準となっています。介護サービスの需要がますます高くなり、利用者が増えると予想されるため、限られた人材を活用し効率よく業務を行える体制をあらかじめ整えておく必要があります。
(参照元:https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2020/kekka/pdf/summary_01.pdf 5ページ)
介護DXの事例
介護DXの導入事例として挙げられるのは、介護ロボットの活用やペーパーレス化の取り組み、グループウェアの導入などです。ここでは、それらの事例を紹介していきます。
介護ロボットの活用
介護の現場は力仕事が多く、従業員に体力的な負担がかかりやすいものです。自由に体を動かせない高齢者の移動を助けたり、体を持ち上げたりといった業務を全て人の手で行うには、多くの労力や時間を要します。近年、スタッフの負担を軽減し業務効率化を助けるために、介護ロボットの導入が進んでいます。
厚生労働省は、以下のようなさまざまな種類の介護ロボットについて、開発や普及を支援しています。
- 高齢者が体に装着することで歩行を助けるもの
- 介助者が装着することでパワーアシストするもの
- 高齢者が移動する際に使う歩行アシストカート
- センサーや外部通信機能を用いた見守りシステム
- 設置位置を調整できるトイレ
介護ロボットを使いこなすためのシステムも開発されており、この先ますます多くの施設で導入が進んでいくと予想されています。
(参照元:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000209634.html
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000210895.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/0903.pdf)
ペーパーレス化
多くの介護現場では、利用者ひとりひとりについてケアの記録や申し送り書の記載などに時間を費やしていることでしょう。業務中にメモを取ってから、後で正式な書類に書いたり、パソコンに打ち直したり、といった無駄な業務が発生していることも多く、記録作業をいかに効率化するかが課題となっていました。
そのような課題を解決するのが、タブレットやスマートフォンなどの端末と介護システムを連携し、離れた場所にいてもシステムに直接入力できるプラットフォームです。記録を電子化し、場所や時間にとらわれずにデータを記録・共有できます。書類の印刷や書類管理にかかるコストを削減できるだけでなく、引き継ぎ業務の負担を軽減する効果もあります。
グループウェアでのコミュニケーション
グループウェアとは、チャットやスケジュール管理、タスク管理、ファイル共有、Web会議などの機能を備えたソリューションです。従業員が離れた場所にいてもすぐに必要なデータを共有でき、チャットでの情報伝達が可能です。
忙しい介護現場において、口頭による情報伝達のみでは、周知漏れや誤解が発生しかねません。グループウェアは履歴が残るため、データを後から確認することもでき、そのようなトラブルを防ぐ効果が期待できます。また、共通の進捗管理表やスケジュール表などを利用できるため、効率よく業務を進められるでしょう。
介護DXのメリット
介護DXのメリットは、業務効率化や人材不足の解消、サービスの向上などが挙げられます。
業務を効率化できる
ITツールの導入によって、従来は人の手で行っていた業務を自動化・省人化できます。介護現場は業務の幅が広く、どうしても人が行うべき仕事もあるでしょう。そのような業務に人材を割き、代替できる入力作業や単純作業などに専用ツールを活用することで、従業員の負担を減らせます。
無駄な残業が減ることで残業代の削減も実現可能です。コストを削減し利益を拡大できれば、従業員の待遇を良くしたり、より性能の高いシステムを導入したりと、施設をより良くするための好循環が生み出されるでしょう。
人材不足を解消できる
介護ソフトや介護ロボットを導入することで、少人数で業務を回せるようになり、人手不足を解消できます。従業員がゆとりをもって仕事に取り組めるようになるだけでなく、人件費削減による経営者側のメリットも期待できます。
従業員の負担や残業時間を削減できれば、離職率を下げて優秀な人材を確保することも容易になるでしょう。従業員の体調を整えたり、ワークライフバランスを改善したりする効果も期待でき、長く働きやすい環境をつくることにもつながります。それによって採用コストも削減可能です。
介護サービスの質の向上が期待できる
データ活用やデジタル技術により質の高いサービスを提供できるメリットがあります。蓄積されたデータを利用すればひとりひとりに合ったケアプランを作成しやすくなりますし、自動化システムを活用すればデスクワークにかかる時間を大幅に短縮可能です。
空いた時間をより生産的な業務に充てることで、利用者の満足度向上にもつながります。管理者がスタッフの勤務状況を把握しやすくなり、業務の抜け漏れなどミス防止にも役立つでしょう。
日本は今後ますます高齢者が増えていくと見込まれていますが、労働力は限られています。従業員の負担を軽減しつつサービスの質を向上できる介護DXは、今後ますます欠かせないものとなっていくでしょう。
介護DXの課題
介護DXは、日本の消費高齢化や労働力人口の減少などへの効果的な対応策ですが、克服するべき課題もあります。
第一の課題は、初期費用がかかりやすいことです。介護DXには、デジタル技術を搭載した専用システムの導入が欠かせません。まだネットワーク環境が構築できていない場合は、それらを整備したうえでパソコンやタブレット、ソフトウェアなどをそろえなければなりません。費用が膨らみやすいため、中長期的な効果を予測したうえで、メリットが大きい場合は導入を検討するのが望ましいでしょう。
第二の課題は、ITの知見がある人材が不足しており、導入したシステムを使いこなせない場合があることです。いくら高性能なシステムを取り入れても、それらを活用できなければ意味がありません。使い方や活用方法をレクチャーするセミナーに参加したり、初心者でも使いやすい操作性のものを選定したりするなど、導入後いかに定着させるかにも注意を向ける必要があります。
まとめ
介護DXとは、デジタル技術を活用して、介護現場の業務効率化や生産性向上などにつなげることです。介護ロボットやペーパーレスを促進するソリューション、グループウェアなどを導入している事例もあり、もともとは人の手で行っていた業務を自動化している事例も増えています。
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