健康診断業務の人事労務への負担を減らすためには
- 2022.07.01
- 予知・予防
- ウェルネスの空 編集部
健康診断業務が煩雑で、効率化したいと考えている人事労務担当の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、健康診断業務が複雑である理由や業務内容、負担が大きくなりやすいポイント、負担を軽減するポイントについて紹介しているので参考にしてください。
人事労務の健康診断業務は複雑
健康診断の実施にあたって、人事労務が担当する業務は複雑です。スムーズな実施に向けて、担当者がやりとりする必要のある関係者としては以下が挙げられます。
- 経営者
- 健康保険組合
- 従業員
- クリニック
- 産業医
- 所轄の労働基準監督署
これらの関係者と調整を行い、実施日の設定や病院・医師の予約などを行います。複数回のやりとりが必要になることもあり、健康診断の実施には手間がかかります。
健診のために人事労務が行う業務
健康診断の際に、人事労務が行う業務の流れは以下の通りです。
1.対象者をまとめる
まずは健康診断の対象者をリストアップします。対象者は社会保険への加入者が目安であり、具体的には正社員および週の労働時間が正社員の3分の4以上かつ1年以上雇用される予定または1年以上雇用されている従業員が対象です。
参考:定期健康診断
2.病院を予約する
対象者をまとめたら、病院を予約します。労働安全衛生法に基づいて、必要な項目を受診できる病院を選んでください。
参考:労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~
3.本人に検診日を伝え、受診してもらう
病院と実施日が決まったら、対象者へ健診日を伝え受診してもらいます。健診日の連絡は、従業員が忘れないようメールや書面など、記録として残る方法がよいでしょう。従業員は健診日が近付いたときに、通知を見返して日時や病院を確認できます。
4.病院から結果を受け取る
従業員の受診が終わると、後日病院から郵送にて結果の通知が会社に届きます。記載内容は受診者の個人情報にあたるため、許可された担当者と受診した本人以外には漏らさないように十分な注意が必要です。
5.本人に結果を通知する
各従業員へ結果を通知し、誤って他者に渡すことのないよう直接本人へ手渡しします。また異常所見があった場合には、診断結果と医師の意見に基づき、必要に応じて配置転換や休業などの対応を行います。
6.結果を健康診断個人票へ記載する
健康診断の結果は健康診断個人票へ記載し、保管します。労働安全衛生法では、健康診断個人票の作成および5年間の保存が義務として定められています。
参考:労働安全衛生規則第51条
7.定期健康診断結果報告書を管轄の労基署に提出する(50名以上の事業所のみ)
労働者が常時50人以上在籍する企業は、定期健康診断結果報告書を労基署へと提出します。
ここまでが一連の健康診断業務の流れです。さらに、人間ドックやがん検診といった検査を従業員へ受けさせる場合には、健康保険組合への補助申請業務も追加で必要です。
健診業務のうち負担が大きくなりやすいポイント
健康診断業務において、負担が大きくなりやすいのは次の3点です。
- 従業員との調整
- 病院との調整
- 健康保険組合とのやりとり
時間や手間のかかる手続きを先に把握しておくことで、スムーズに業務を進めましょう。
従業員との調整
具体的な日程・人数・検査内容などを決めて病院へ予約するには、従業員の希望を聞き取って調整する必要があります。従業員が希望する健診日や検査項目の調査、回答の呼びかけ、日程の変更、キャンセルへの対応など、それぞれの事情に沿うためには煩雑な手間がかかります。また、予約後に受診日変更の申し出やキャンセルがあった場合には、病院と再度調整しなければなりません。
従業員の人数が多いほどこれらの業務は増大するため、人事労務担当者には大きな負担となるでしょう。
病院との調整
従業員との調整とともに、それに対応できるよう病院との調整が必要です。電話やFAX、Webサイトなど、病院ごとに予約手順は異なるため、連絡方法や受付時間について把握しておきましょう。予約方法を確認したら、予約可能な日を確認します。予約が埋まっている場合は、別途問い合わせや病院の変更が必要です。
予約枠を確保したら、従業員へ受診する希望日を聞き取り、予約を行います。前述の通り、予約後の日程変更やキャンセルなどの申し出が従業員からあると、病院へ連絡しなければなりません。
健保組合とのやりとり
健康保険組合とのやりとりも大きな負担となります。補助の出る条件が年齢や性別などで細かく設定されているので、検査コースの選定に手間がかかります。条件が複雑で、適用できるかが不明な場合には、健康保険組合への問い合わせが必要です。
検査コースが決定したら補助申請を行いますが、フォーマットが複雑なこともあります。健康保険組合ごとにフォーマットは異なり、回答形式、書式が細かく設定されています。提出後に不備があると受け付けてもらえず、再提出が必要です。このような書類準備も、従業員の人数が多いほど作業量が膨大になります。
健康診断業務の業務負担を減らすためのポイント
業務負担を減らすための施策として、以下が有効です。
- 毎年同じクリニックを利用する
- 社内通知の徹底
- ツールやアウトソーシングの活用
利用するクリニックの数を絞り毎年同じクリニックを利用する
健康診断は最低でも年1回と定められています。利用する病院の数を絞っておき、毎年同じ病院を利用することで、負担の軽減が見込めます。
病院ごとに連絡方法や予約手順などが異なるため、毎年異なる病院を利用したり、利用する病院数が多かったりする場合には、慣れない病院との調整を要することから負担が大きくなります。あらかじめ病院を絞り、利用する病院を固定することで、このような手間を省略することが可能です。
また、受診者の情報が病院ごとに記録されることもあり、予約時の入力作業などの手間を省けます。
社内通知を徹底する
従業員との調整において担当者の負担が大きい業務は、回答しない従業員へのアプローチや変更、キャンセルへの対応などです。これらは、従業員が連絡に気づいていない場合や、予約した日時を覚えていない場合が原因となります。
そのため、健康診断の実施の連絡、希望受診日や検査項目の調査など、連絡を効率的かつ確実に行う必要があります。従業員からスムーズに回答してもらえるよう、各部署の管理職から所属メンバーへの回答を促してもらったり、変更やキャンセルの場合に情報を伝達してもらったりと、協力体制を築くことも重要です。
健診用のツールやアウトソーシングを検討する
健康診断の情報管理に使えるツールやアウトソーシングの活用によって、大幅に業務負担を減らせます。ツールを利用すれば、健康診断に関する情報や記録を一元管理することができ、情報を整理する手間が省け、確認や編集もスムーズに行えます。
管理機能により、未受診や回答の遅れ、キャンセルしやすい従業員を自動抽出して素早く把握できます。回答の催促や受診忘れを防止するために、対象者へ直前に日程を再連絡するなどの対応を取ることで、抜け漏れなく確実に受診させられるでしょう。
また、健康診断業務のアウトソーシングサービスもあり、受診者の情報を提供することで、健康診断に必要な事務処理や従業員、病院、健康保険組合とのやりとりを代行してくれます。
まとめ
健康診断業務は関係者との調整が煩雑で人事労務担当者には大きな負担がかかります。調整をスムーズに進めるには、従業員や病院、健康保険組合などの関係者との連携が不可欠です。
これらの業務を効率的に行うには、病院の固定化や連絡体制の強化、ツールによる情報管理の一元化、またはアウトソーシングなどを行うとよいでしょう。健康診断は必ず毎年行う必要があるため、効率的に業務を行えるよう、いち早くこれらの施策を実施することが重要です。
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