特定健診と健康診断の違いとは? 対象となる人や項目を解説
- 2022.11.16
- 健康維持・増進
- ウェルネスの空 編集部
近年では、社員が働きやすく健康な状態を保つための環境づくりが注目されています。企業が実施する健診によって社員の健康状態を把握し、社員の健康増進に努めることが大切です。この記事では、特定健診と一般健診の違いや各診断項目、健康経営®の重要性について解説します。健診についての理解を深め、社員の健康増進へ活用してください。
※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
特定健診と一般健診(健康診断)の違いとは?
特定健診と一般健診(健康診断)には、対象者や診断項目をはじめとする多くの違いがあります。以下では、その違いを明らかにします。
特定健診とは
まずは、特定健診の目的、対象や診断項目を解説します。
特定健診は40~74歳を対象にメタボリックシンドロームのリスクをチェック
「メタボ健診」とも呼ばれる特定健診は、2008年4月から始まりました。特定健診の対象は40歳以上75歳未満の保険加入者であり、主体は国民健康保険や健保組合等の保険者です。
生活習慣病(高血圧症、糖尿病、脂質異常症等)は重症化すると脳卒中、心筋梗塞等のリスクがあります。初期は自覚症状がない場合も多いため、早期の発見・予防が重要です。
特定健診の目的はメタボリックシンドロームに注目し、生活習慣病のリスクがある人を明らかにして病気の発症・重症化を防ぐことです。
メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の蓄積に加えて脂質異常、高血糖、高血圧等の動脈硬化のリスクを2つ以上併せ持つ代謝異常を指します。
メタボリックシンドローム、あるいはメタボリックシンドローム予備軍の診断基準は、以下の2つです。
- 腹囲(男性 85センチメートル、女性 90センチメートル)
※内臓脂肪面積の測定可能な場合、男女ともに内臓脂肪面積が100cm²以上である - 血圧・血糖・脂質の検査値が基準値以上
特定健診の結果、生活習慣に問題があると判断された人は特定保健指導を受け、生活習慣の改善に取り組みます。
診断項目
特定健診の診断項目は、以下の通りです。一般健診と異なり、メタボリックシンドロームに焦点を当てた検査内容になっています。
- 診察
- 問診
- 身体計測(身長・体重・BMI・腹囲)
- 血圧測定
- 血中脂質検査(中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール)
- 血糖検査(空腹時血糖、HbA1c)
- 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)
- 尿検査(尿糖、尿蛋白)
一定の基準のもとで、医師が必要だと判断した場合には、以下に示す詳細な検診が行われます。
- 心電図検査
- 眼底検査
- 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
- 腎機能検査(クレアチニン、eGFR)
一般健診(健康診断)とは
ここからは、一般健診(健康診断)の目的、対象や診断項目を解説します。
一般健診は全ての労働者への実施が義務付けられている健康診断
一般健診とは職種・業種を問わず、全ての労働者への実施が義務付けられている健康診断です。労働安全衛生法の定めにより、事業者は労働者に対して医師による健康診断を実施しなければなりません。企業が行う健康診断の費用は企業負担です。
一般健診には、以下の種類があります。
- 雇入時の健康診断
- 定期健康診断
- 特定業務従事者の健康診断
- 海外派遣労働者の健康診断
- 給食従業員の検便
雇入時の健康診断は入社の際、定期健康診断は1年に1回の実施です。
「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう 厚生労働省」
診断項目
一般健診の診断項目は一律ではなく、健康診断によって異なります。
雇入時の健康診断において、検査の実施が義務付けられているのは以下の項目です。
雇入れ時の健康診断
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 身長・体重・腹囲、視力及び聴力の検査
- 胸部エックス線検査
- 血圧測定
- 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
- 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)
- 血中脂質検査(HDLコレステロール,LDLコレステロール、血清トリグリセライド)
- 血糖検査
- 尿検査(尿糖、尿蛋白)
- 心電図検査
定期健康診断の項目を以下に示します。
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 身長※・体重・腹囲※、視力及び聴力の検査
- 胸部エックス線検査※ 及び喀痰検査※
- 血圧測定
- 貧血検査(血色素量及び赤血球数)※
- 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)※
- 血中脂質検査(HDLコレステロール,LDLコレステロール、血清トリグリセライド)※
- 血糖検査※
- 尿検査(尿糖、尿蛋白)
- 心電図検査※
※の項目は、一定の条件を満たした場合に省略可能です。
健診の受診率向上が健康経営の実現に不可欠
一般健康診断を社員に受けさせることは事業者の義務であり、受けさせなければ違法になります。特定健康診断の実施は義務付けられていますが、受診は強制ではありません。
しかし、社員が健診を受ければ生活習慣の見直しや改善の契機となり、病気の発症や重症化の予防につなげられます。これは企業・事業者にとっても大きなメリットです。
健康経営の実現には健診の受診率向上が不可欠であり、そのための取り組みが必要です。
健康経営とは
経済産業省は、健康経営を「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に行うこと」と定義しています。社員への健康投資を行うことでパフォーマンスが向上し、業績・株価へのプラスの影響が見込めるでしょう。企業の成長は、社会の発展につながります。
健康経営を行うための組織をつくり、具体的な計画・目標を設定しましょう。健康経営の実施には従業員への教育をはじめとする土台作りや、感染症予防・喫煙防止等の具体的な対策が必要です。
健康経営のメリット
健康経営によって社員が心身ともに健康になることには、生産性・業績の向上、離職率の低下・人材の定着、企業イメージの向上、健康経営優良法人の認定が得られる可能性がある、といったさまざまなメリットがあります。そのため、多くの企業が健康経営を導入しています。
社員があらゆる面で健康になれば、企業が負担する医療費が低減され、企業イメージも良好になるでしょう。それらは行基の向上につながります。健康経営に積極的に取り組む企業は社員にとっても魅力的であり、有能な人材の定着が見込めます。
健康経営に取り組めば、健康経営優良法人認定への申請も可能となり、認定されれば企業の社会的評価も向上するでしょう。健康経営優良法人認定については、以下で詳しく解説します。
健康経営優良法人に認められることも
健康経営優良法人制度とは、経済産業省が2016年に創設した制度であり、健康経営を推進する企業が対象です。新型コロナウイルス流行の影響もあり、認定を受ける企業は近年急増しました。
認定を受けるメリットは、以下の通りです。
- 自治体による顕彰制度
- 金利・融資の優遇措置
- 助成金・補助金制度
- 公共調達の加点
- 保険料の割引
- ロゴマーク使用可能
健康経営優良法人認定制度へのインセンティブ措置を設ける自治体や銀行、保険会社も増えつつあります。
健康経営優良法人の認定基準の中には、健康診断の受診率が高いこと(実質100%)が含まれます。健康経営に取り組む企業は、今後も増加し続けるでしょう。
まとめ
特定健診は中高年層を対象にメタボリックシンドロームのリスクをチェックするものであり、一般健診は全ての労働者を対象とする健康診断です。各健診によって診断項目は異なります。
社員の検診受診率向上は企業の成長・発展において重要です。
企業による健康経営の実施により、生産性の向上や医療費の削減が見込めます。健康経営優良法人に認定されれば、さまざまな優遇措置が受けられるでしょう。
企業が社員の健康を包括的にサポートすることで、社員のモチベーションや労働意欲を高く保てるため、企業の成長が促進されます。
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