デジタルヘルスの市場規模は約4,800億ドル!注目される背景や事業例を解説
- 2022.04.27
- 診断・治療
- ウェルネスの空 編集部
デジタルヘルスは、グローバルな市場規模が2025年に4,800億ドルに達すると予想されるなど注目されている分野です。なぜ日本円で5兆円、2022年の日本の国家予算の20分の1に匹敵するほどの市場規模となるのか、その背景や、実際に利用されている事業例などを解説しています。
デジタルヘルスとは
デジタルヘルスとは、人工知能(AI)、IoT、ウエアラブル端末、ビッグデータ解析などのデジタル技術を医療やヘルスケアに導入することを指し、その効果の向上が期待されます。デジタル環境が普及したことで、近年では効果的なデジタルヘルスサービスの利用が可能になってきています。
デジタルヘルスには、モバイルデバイスと無線インフラなどを活用する「モバイルヘルス」や、ヘルスケアデータの管理、分析を行う「ヘルスアナリティクス」などがあります。また、個人の健康記録、医療記録などの情報を管理する「健康情報技術」、離れた場所から医療提供が行える「遠隔医療」などの医療サービスもデジタルヘルスに含まれ、実用化が進んでいます。
日本は平均寿命が男性で約79歳、女性は86歳、女性の2人に1人が90歳まで生きるといわれ、人生100年時代を迎えています。それに伴い医療や介護負担の増大による現役世代への経済圧迫も懸念されています。
(参照URL:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/nennkin10_3.pdf)
超高齢化社会において生活の質を維持するには、いわゆる健康寿命を引き上げなくてはいけません。それには、デジタルヘルスを活用し、日常の活動や健康状態を記録・管理して病気の予防や健康維持に役立てるヘルスケアや、医療面での迅速なサポートを充実させることが、より重要になってきます。
デジタルヘルスの市場規模
株式会社グローバルインフォメーションの市場調査レポートでは、デジタルヘルス市場は2020年の1,833億ドルから年平均成長率(CAGR)20%以上が見込まれ、2025年には4,837億5,000万ドルに成長するとの予想がなされています。
(参照元:https://www.value-press.com/pressrelease/269680)
また、BCC Researchの世界市場2026年予測によると、デジタルヘルス市場の規模は2026年で3,848億ドルと予想されています。
(参照元:https://researchstation.jp/report/BCC/3/Digital_Health_Technologies_2026_BCC340.html)
デジタルヘルス市場は、2020年の新型コロナウイルス感染拡大時に急激に需要が増大したため、今後一時的な在庫調整による成長鈍化はあるものの、その後は大幅に成長速度が上がると考えられています。
デジタルヘルスが注目されている背景
テクノロジーの進歩によりさまざまな機器が普及したこと、新型コロナウイルスの影響による遠隔医療の急速な普及などから、現在注目を集めているのがデジタルヘルスです。
テクノロジーの進歩
近年のITテクノロジーの進歩によるクラウドコンピューティングの一般化とモバイルデバイスの導入は、デジタルヘルスのデジタルトランスフォーメーションを促進し、業務効率化やコスト削減の実現に寄与しています。モバイルデバイスでヘルスケアアプリケーションを利用して容易にクラウドへアクセスすることで、本人が主体になった健康管理を行うことが可能になります。
モバイルデバイスは、健康管理、体調確認、医療従事者とのコミュニケーションにも活用できます。医療従事者が患者の状態や投薬などの記録を手軽に残せるツールとして活用するケースもあり、テクノロジーの進歩による新しい機器の利用は急増しています。
新型コロナウイルスの影響
新型コロナウイルスのパンデミックは、世界中の医療体制に大きな影響を与えています。新型コロナウイルスの患者に対する隔離措置や人々の移動制限といった政策により、デジタルヘルスが注目を集めることになり、日本でもオンライン医療サービスの利用が進みました。
感染予防や健康促進に役立つIoTヘルスケア製品もデジタルヘルスには欠かせません。アメリカで開発されたデジタルヘルス機器のひとつにIoT体温計があります。測った体温データはBluetoothでスマートフォンを介してクラウド上に保存され、地域ごとに住民の体温を確認、管理できるため、感染症流行の把握が可能です。新型コロナウイルス感染者との接触を通知するアプリ、感染予防に脈拍、血圧、体温などを測定して管理する装着型のデバイスなど日本でも次々と製品が提供されており、現在でも世界中で開発が進んでいます。
日本におけるデジタルヘルスの現状
世界最大級のデジタル関連サービス・コンサルティング企業Accenture Japanの調査によると、日本のデジタルヘルス利用率はかなり低いことがわかります。健康管理にデジタル技術を利用している人の割合が、世界平均60%のところ日本は37%と低い数値にとどまっています。日本ではデジタルヘルス技術への移行が遅く、電子健康記録、ウェアラブルデバイス、オンライン診療などの利用もまだ普及していません。
経済協力開発機構(OECD)の調査結果では、電子カルテ(EMR)を使用した、かかりつけ医の診療所の割合がOECD諸国のなかでも最低水準になっています。OECD諸国の多くは、プライマリケアを行うために病院や診療所で電子カルテを導入しています。患者の症状などカルテに記載されている情報を電子化してクラウド上に保存することで、あとから本人が自身の健康・医療の状態を画面で調べることもできます。
(参照URL:https://www.oecd-ilibrary.org/sites/08cffda7-en/index.html?itemId=/content/component/08cffda7-en)
日本におけるデジタルヘルスの課題
Accenture Japanの調査によると、日本でデジタルヘルスの利用率が上がらないのは、第三者にヘルスデータを管理されることに対する抵抗感が強いためだとされています。ウェアラブル技術を利用して、毎日のヘルスデータを収集、蓄積して活用することは、診断や治療に役立つだけでなく病気の予防にもつながります。
予防医療の分野では、個人の血圧、脈拍などの健康状態や、一日に歩いた歩数などといった日常生活のデータを収集・分析を行って予防効果を高められます。日本人は個人のデータを第三者に管理されることに不安感を持っているものの、医師や病院から勧められた場合には安心して使用する可能性が高いとの調査結果もでています。日本の場合は、課題となっているデジタルヘルスの普及に向けて医療機関が主導することが大切と言えます。
アメリカでは一部の領域ではあるものの、医療AI自身が画像を分析し、病気の診断を下せる医療機器も認可されていますが、日本ではまだAIに医療行為を任せることに不安を覚える人も多く、これも今後の課題となっています。
デジタルヘルスの事業例
デジタルヘルスの事業には、AIを使った診断サービスや手術支援をするロボットなども含まれます。豊富なデータ量を活かせるAIや精密な作業を得意とするロボットなど、デジタルの特徴が存分に活かされています。
AIを使ったサービス
AIを使った多くのサービスのなかで、日本でも実用化されているものに顔認証AIを応用したがんの病変確認があります。ウェアラブル視鏡検査の画像を医師が目で見て診断を行います。ウェアラブルデバイスが早期発見に大きく寄与しています。また欧州では、AIが行う健康診断サービスアプリも実用化され、医療機関へのアクセスが難しい地域の課題解決に役立っています。
手術支援をするロボット
手術支援ロボットは、患者の体に負担をかけない最小限の開腹で複雑な手術を行うために開発されました。執刀する医師が画面で体内の映像を見ながら、鉗子を持つロボットのアームを操作して手術を行います。手術ロボットはすでに実用化されていて、患者の負担が少ないため早期の社会復帰が期待できます。また、熟練した医師の手技をデジタル化することで、優れた技術を伝承し、手術ができる医師を増やせる効果もあります。
まとめ
デジタルヘルスとは、医療やヘルスケアの効果を上げるために、AI、IoT、ウェアラブルデバイスなどのデジタル技術を活用することを指し、超高齢化社会の日本で健康に長生きするために、今注目を集めている分野です。デジタルヘルス市場は、2020年の新型コロナウイルス感染拡大時から大幅な成長が始まり、2025年には4,837億ドル以上の市場規模に達すると予想されています。
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