高ストレス者とは? 判定方法や把握の重要性から面接指導まで解説
- 2024.02.20
- 予知・予防
- ウェルネスの空 編集部
企業が実施するストレスチェックで、従業員が高ストレス者に該当した場合、企業はどのようにサポートすれば良いのでしょうか。この記事では、高ストレス者についての基本的な概要をはじめ、高ストレス者への面接指導の流れや具体的な内容を解説します。
高ストレス者に当てはまる人は?
高ストレス者とは、ストレスチェックにおいて心身が過度のストレスにさらされている状態であることが明らかになった者を指します。具体的には、心身のストレスに関して自覚症状が強くある者や、ストレス要因が多い者、適切なサポートを得られていない者などです。
そもそもストレスチェックとは、労働者のメンタルヘルス状況について企業および労働者自身が適切に把握し、必要な措置を講じられるようにすることを目的にした検査です。労働安全衛生法第66条によって、常時50人以上の労働者を雇用する事業場に1年ごとの定期実施が義務付けられています。
このストレスチェックにおいて従業員が高ストレス者と認定された場合、企業はメンタルヘルス状態を改善するために対応することが求められます。
高ストレス者の判定方法
高ストレス者の判定は、衛生委員会の審議や厚生労働省の基準に沿って実施します。厚生労働省が公表している「職業性ストレス簡易調査票」では、「仕事のストレス要因」「ストレス反応」「修飾要因(周囲からのサポート状況)」の3分野が設定されています。この中で特に評価の比重が高い分野は、自覚症状の有無に関わる「ストレス反応」です。この項目の点数が非常に高い人は、それだけで高ストレス者と見なされます。
一方で、ストレスの自覚症状が薄くてもストレス要因が多かったり、周囲のサポートが不十分であったりするようなケースでも、メンタルヘルスが危険な傾向にあることは変わりません。そのため、高ストレス者の判定は、「ストレス反応」だけでなく、その他の2項目の評価も総合的に見て行われます。
高ストレス者を把握する重要性
高ストレス者の従業員を適切に把握することは、企業のメンタルヘルスケア対策として重要です。メンタルヘルスの不調は、従業員の生産性やモチベーションの低下をもたらし、結果として企業の業績に悪影響を与えます。また、高ストレス状態を放置した結果、従業員が精神疾患に至った場合、安全配慮義務違反に問われて法的トラブルに発展する恐れもあります。そのため、企業は自社の業績を守るために、またコンプライアンスの観点からも、高ストレス者の把握とそのケアを積極的に取り組まなければなりません。
高ストレス者への対応
ストレスチェックの目的は、労働者のメンタルヘルス不調の早期発見および早期対処を可能にすることです。ストレスチェックによって高ストレス者であると判明した従業員が、医師による面接指導を希望した場合、事業者はこれを実施する義務があります。また、面接指導を行った医師の意見を参考に、従業員のメンタルヘルスを保護・改善するために必要な就業上の措置を取ることも事業者に義務付けられています。ただし、事業者側から従業員に面接指導を強要することは認められません。
高ストレス者に対する面接指導
では、高ストレス者に対する面接指導は具体的にどのように実施する必要があるのでしょうか。その実施方法やかかる費用など、具体的な内容を紹介します。
実施方法
まず、ストレスチェックの結果は従業員本人に送付する必要があります。その際、高ストレス者に対しては、面接指導の申込方法なども同時に通知します。なお、高ストレス者に対して面接指導を勧めることは問題ありませんが、強要にはならないように注意しましょう。また、ストレスチェックの結果は重要な個人情報であるため、その取り扱いには十分な注意が必要です。
高ストレス者が希望した場合、医師または産業医と日程を調整した上で面接指導を実施します。その際、企業は医師に対して高ストレス者の勤務状況や健康状態に関する情報を共有する責任があります。従業員の状況を正確に知ることは、医師が的確に面接指導する上で大きな役割を果たすため、誠実に対応しなければなりません。
実施内容
面接指導では、医師または産業医によって高ストレス者の心身の健康状況や勤務状況などが確認されます。医師はこのプロセスを通じて、高ストレス者が直面している健康リスクやその原因の分析・評価を行います。
面接指導の結果、医師は高ストレス者に対してセルフケアの指導を行ったり、専門の医療機関への受診を勧めたりします。また事業者に対しても、高ストレス者に対するサポートや、職場環境の改善などに関する意見がされることもあります。
実施後の対応
面接指導の後、事業者は面接指導を担当した医師からの意見を受けて、高ストレス者の健康を守るために必要な対策を講じることが求められます。具体的には労働時間の短縮、業務負荷の軽減、業務内容や就業場所の変更などです。
健康状況が深刻であれば、一時的な休職の勧奨が妥当な場合もあります。ただし、ストレスチェックや面接指導の結果を受けて、その従業員に不利益を与えることは禁じられています。そのため、本人としっかり話し合い、同意を得た上で対策を講じなければなりません。
実施にかかる費用
ストレスチェックと同様、面接指導の実施に関する費用についても事業者側が負担する必要があります。これは、高ストレス者に対する面接指導が労働安全衛生法において事業者側に課せられた義務であるためです。面接指導の一般的な費用は、1万円前後が目安です。
面談を希望しない高ストレス者への対応
高ストレス者が面談を希望しない場合、事業者は特別な配慮が必要です。法的に面談の受諾を強制することはできませんが、面談を受けない選択をした従業員に何も対処しないままにした場合、企業が労働者の安全配慮義務に違反していると見なされるリスクがあります。
そのため、面談の拒否理由を確認し、その上で面談の意義やメリットを丁寧に説明し、再度面談を受けるように推奨することが望ましいです。高ストレス者が社内の産業医に相談することをためらっている場合であれば、社外の相談機関やサービスの利用を提案するなど、代替となる支援方法の提供も検討しましょう。また、面接指導や医師の意見を待つまでもなく職場環境に問題があることが明らかな場合、事業者側から積極的にその改善に取り組まなければなりません。
高ストレス者に適切な対応をとるために
高ストレス者に対して適切な対応を取るために、企業は定期的にストレスチェックを実施するとともに、高ストレス者が面接指導を受けやすい環境を整えることが重要です。たとえば、社内外に健康相談窓口を設置することや、オンラインで面接を申し込めるようにする施策は、一定の効果が見込めます。また、面接指導の意義を伝えたり、面接指導を受けることによって不利益が発生しない旨を保証したりする対策も重要です。
高ストレス者と判定されること自体に不安を感じる人もいるため、職場内にはすでに潜在的な高ストレス者がいる恐れもあります。そのような事態を防ぐためには、メンタルヘルスに対する理解を職場全体で深め、管理者が日頃から従業員のメンタルヘルス状況を気にかけることが何より重要です。
まとめ
ストレスチェックで高ストレス者と判定された従業員に対して、企業は面接指導の勧奨・実施をはじめとした適切な措置を講じる必要があります。本人が面接指導を渋った場合は、強制する形にならないように配慮しつつ、面接指導の意義を丁寧に説明しなければなりません。面接指導後は医師の意見を参考に就業環境を改善する施策が求められます。このような健康管理業務を行う際は、ヘルスケアサービスの利用が有効です。詳細については、下記リンクの資料をご確認ください。
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