フェムテックとは 女性の悩みに寄り添い解決する技術
- 2022.06.20
- 健康維持・増進
- ウェルネスの空 編集部
女性の悩みを技術で解決するフェムテックが、注目を浴びています。本記事では、フェムテックとはどのようなものか、そしてフェムテックが注目を浴びる背景について説明します。女性特有の健康問題と、それを解決してくれるフェムテック商品もまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
フェムテックとは
フェムテック(femtech)は、「female(女性)」と「technology(技術)」を掛け合わせてつくられた言葉で、2013年頃から使われるようになりました。月経管理アプリ「Clue」を開発したドイツの女性創業者Ida Tin(イダ・ティン)氏が、事業資金を集めるためのキャッチコピーとして考案した造語です。
フェムテックという用語にはっきりとした定義はありませんが、6つのカテゴリに分類するのが一般的です。細かい内容は企業や団体などが独自に決めているため、多少の違いがあります。
課題として取り扱われることが多いのは、以下の6つです。
- 月経・整理
- 更年期
- 妊活・不妊
- 妊娠・産後
- メンタルヘルス
- セクシャルウェルネス
これらの悩みを「テクノロジーを用いて解決していこう」と考える企業が、フェムテック製品やサービスを開発しています。
フェムテックが注目される背景
現在、フェムテックが注目されている背景には、SDGsの推進やテクノロジーの進歩があります。以下でそれぞれについて説明します。
SDGsの推進
「持続可能な開発目標」について、耳にしたことがある人も多いでしょう。国連総会が決定したSDGsの目標5に「ジェンダーの平等を達成して、子供を含むすべての女性に権利を与えてその能力を開花させる」というものがあります。フェムテックはこの目標の達成に大きく寄与すると考えられることから、さまざまな企業が参画し、市場規模も年々拡大しています。
フェムテックを用いて積極的に問題を解決することによって、「女性たちの人生を大きく左右する重大なこと」を諦めずに済むかもしれません。具体的には女性が計画的に妊娠・出産できるようになったり、更年期障害の解決策のひとつになったりします。
身体の状態を自分で管理できることで、ライフイベントに合わせた働き方も実現します。女性の健康問題をタブー視せずに、多くの人が現状を理解することが大切です。
テクノロジーの進歩
近年、センサーなどのテクノロジーの進歩によって、女性の心身の不調と結びつくさまざまなデータが得られるようになりました。それらのデータを分析することで、女性特有の不調に関する研究が進み、解決策が示されやすくなっています。
また、5G通信や人工知能などの技術が有効活用されて、画期的なフェムテック製品やサービスも次々と生まれています。これらもフェムテック市場を活気づける一因となっているでしょう。
働く女性の健康課題
企業が生産性を上げるためには、「働く女性の健康課題」を解決することが求められていますが、具体的にはどのような課題があるのでしょうか。主要な3つの健康課題について、以下で説明します。
月経に関連する体調不良
1つ目は、月経に関連する体調不良です。
経済産業省の調査によると、月経に伴う症状や月経前症候群(PMS)によって、仕事のパフォーマンスが下がると答えた女性は45%です。また97%の女性が、「つらい症状を感じた経験がある」と回答しています。
月経に起因する体調不良によって生じた、国内の労働損失をお金に換算すると約4,900憶円にも上ると言われており、大きな課題であることがわかります。
PMSの対策として用いられる低用量ピルは日本での普及率が低く、体調管理としての利用はまだ一般的ではありません。生理による欠勤はしにくいという風潮もあり、改善の方法が探られています。
参照:https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/R2fy_femtech.pdf
更年期障害
2つ目は、更年期に関連する体調不良です。閉経前後の約5年間ずつを合わせた、約10年の期間を更年期といいます。
日本医療政策機構の調査によると、更年期症状や更年期障害の影響によって46%の女性が、「調子が良い時に比べて仕事のパフォーマンスが半減する」状態を感じでいます。
参照:https://hgpi.org/wp-content/uploads/1b0a5e05061baa3441756a25b2a4786c.pdf
また経済産業省の調査によると「更年期症状のせいで昇進を辞退した人」は約50%、「仕事を辞めた人」は17%でした。
参照:https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2020FY/000329.pdf
これらのデータからも。多くの人が更年期の症状に悩まされていることがわかるでしょう。具体的な更年期の主な症状には以下のようなものがあります。
- すぐ疲れる
- 肩こり、腰痛、頭痛、手足の痛み
- 発汗、のぼり、ほてり
- イライラする
- 寝つきが悪い
- 眠りが浅い
これらは一例で、症状の内容や程度には個人差があります。会社でのキャリアが積みあがってきた年齢と重なる更年期は、多くの女性にとって避けられない問題です。
婦人科系疾患
3つ目は、婦人科系疾患です。
乳がんと子宮頸がんは、婦人科系の病気として代表的なものですが、どちらも国内の検診受診率は、諸外国と比べて低い水準にあります。
米国の健診受診率が80%を超えているのに対して、日本の健診受診率は約40%にとどまっており、英国・オランダ・オーストラリア・ニュージーランド・韓国を加えた7か国中で最下位です。
また、不妊の原因にもなりうる子宮内膜症は、国内の患者数が260万人以上と推定されていますが、医療機関を受診しているのは年間約6.7万人にとどまっています。
参照:https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2020FY/000329.pdf
女性特有の疾患を早期発見するためには、定期的な検診が欠かせません。日頃から身体の調子を気にかけておく習慣も大切でしょう。
フェムテック商品にはどんなものがあるのか
女性特有の体調不良を改善するのに役立つフェムテック商品には、どのようなものがあるのでしょうか。以下に、具体例を3つ紹介します。
月経管理アプリ
1つ目は、月経管理アプリです。
生理周期を予測し、予想される症状や気分の変化などを教えてくれるのが「月経管理アプリ」です。フェムテックの生みの親として有名になったデンマーク出身のIda Tinも、ドイツの企業で月経管理アプリを開発しており、世界中で利用されています。昨今では日本の企業でも、独自に新しいアプリの開発が行われています。
たとえば、「ルナルナ」というアプリは、月経日や排卵日を予測して、妊娠しやすい時期と、しにくい時期を割り出す機能が特徴です。生理周期を分かりやすく管理することで、女性の健康と、計画的な妊娠をサポートします。またルナルナでは、低用量ピルを服用している女性のために、日々の服薬や体調について記録できる便利な機能も付いています。
更年期症状を緩和するデバイス
2つ目は、更年期症状を緩和するデバイスです。
更年期特有のホットフラッシュ(ほてり・のぼせ・発汗など)のつらい症状を緩和してくれる、「リストバンド型のウェアラブルデバイス」が開発されています。
リストバンドの内部に設置されたセンサーが体温の上昇を検知すると、自動的に手首の動脈を冷却する仕組みです。血管を冷やすことで全身をクールダウンさせる効果があり、即効性が期待できます。
婦人科医にチャット相談できるサービス
3つ目は、婦人科医にチャット相談できるサービスです。
わざわざ産婦人科の医院へ出向いて受診しなくても、チャットや電話で婦人科医や助産師に相談できるサービスが複数の企業から提供されています。
指定した日時に相談できたり、24時間365日いつでも対応してくれたりするサービスなど、自分のライフスタイルに合わせて利用できます。「多忙で産婦人科を受診できないけれど、気になる症状がある」という人には、とくにおすすめのサービスです。
健康を維持するために、専門家からアドバイスをもらいたい人にとっても気軽に相談できるツールのひとつです。無料版と有料版があるので、使いたいサービスの概要をチェックしてみてください。
まとめ
月経や更年期など、女性特有の体調不良をフェムテックで改善できるようになれば、女性が社会で活躍する場をさらに広げられます。女性従業員の生産性が上がれば、企業にとっても大きな利益をもたらしてくれるでしょう。
今後、世界中でフェムテック産業の市場は、ますます拡大していくことが見込まれています。
フェムテック製品を積極的に導入することで、働きやすい職場の環境作りも、スムーズに行えます。女性の労働損失が少なくなる職場環境を作り上げていくことも重要になってくるでしょう。
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