ウェルビーイング経営とは?取り組む意義・メリット・デメリット

ウェルビーイング経営とは?取り組む意義・メリット・デメリット

近年、新たな経営戦略として注目されている「ウェルビーイング経営」ですが、よくわからないと感じている経営者の方は少なくないはずです。本記事では、ウェルビーイング経営とは何かを説明し、さらに中小企業がウェルビーイング経営に取り組む意義やウェルビーイング経営の進め方などについて解説します。

ウェルビーイング経営とは?

ウェルビーイング経営とは、従業員の心身の健康だけでなく、個人の幸福度や仕事へのやりがいを高めるために労働環境を整えていく経営手法のことです。従来の利益だけを追求する経営ではなく、組織の関係者全員の健康や幸せを追求することで生産性を高め、利益の最大化を目指します。

日本でウェルビーイング経営が知られるようになったきっかけのひとつが、厚生労働省雇用政策研究会が公表した「雇用政策研究会報告書」(2019年7月)です。この報告書では「就業面からのウェルビーイングの向上が、労働者一人ひとりの能力発揮を通じ、企業の生産性の向上に寄与し、また、企業の生産性の向上は、就業面からのウェルビーイングの向上を図るための原資をもたらす」(同報告書から引用)と指摘されています。

さらに、経済産業省が公表した「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書〜人材版伊藤レポート2.0〜」(2022年5月)でも、従業員のエンゲージメントを高める取り組みとして、健康経営®への投資とウェルビーイングの視点の取り込みが重要であることが述べられています。
※ 健康経営®は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

参照元:厚生労働省雇用政策研究会「雇用政策研究会報告書~人口減少・社会構造の変化の中で、ウェルビーイングの向上と生産性向上の好循環、多様な活躍に向けて~ 」
※P13~をご参照ください。

参照元:経済産業省 「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書 ~ 人材版伊藤レポート2.0~ 」
※P70~をご参照ください

中小企業がウェルビーイング経営に取り組む意義

ウェルビーイング経営に取り組んでいると公言している企業の多くは、資本力のある大企業です。そのため、中小企業がウェルビーイングに取り組むことに意味はあるのかと疑問に思う経営者の方も少なくありません。

しかし、これからの時代、大企業だけでなく中小企業にもウェルビーイング経営は必要です。そもそもウェルビーイング(Well-being)とは、体と心、そして社会的つながりが良好な状態を意味します。つまりウェルビーイング経営では、従業員だけでなく経営者や顧客といった組織に関わる全ての人がウェルビーイングであることが重要です。健康で社会的つながりや働きがいを感じながら長く働き続けられる職場は、おのずと従業員の生産性が上がり、利益の安定化に貢献します。また、働きやすい環境は離職率の低下につながるため、中小企業が抱える人手不足の解消に寄与し、企業の価値も高まります。

このようにウェルビーイング経営は、中小企業にさまざまなメリットをもたらし、企業が成長を続けていくうえで有益な経営手法です。

なお、中小企業でウェルビーイング経営を進める際には、会社の経営理念や目的を明確にし、従業員の意見を取り込みながら、トライアンドエラーを繰り返して改善を続けることが重要です。

ウェルビーイングの5要素

ウェルビーイングの考え方は、これまで「ポジティブ心理学」の分野で研究されていました。そして、ウェルビーイングを高めるための要素として提唱されたのが、以下の「PERMAモデル」です。これらの要素を積極的に取り組むことが、ウェルビーイング経営の成功につながるとされています。

【PERMAモデル】

  • P=Positive emotion:ポジティブな感情、心身の健康
  • E=Engagement:エンゲージメント、没入、没頭
  • R=Relationship:よい人間関係や社内雰囲気
  • M=Meaning:モチベーション、人生の意義、生産性
  • A=Accomplishment:達成感、満足感、報酬の安定性

ウェルビーイング経営と健康経営の違い

ウェルビーイング経営とよく混同されがちな言葉に「健康経営」があります。健康経営とは、企業視点から健康診断の実施や運動の推奨、健康教育の推進などに取り組み、利益の拡大や株価の向上を目指します。一方、ウェルビーイング経営は、従業員視点で心や体、人間関係が良好な組織づくりに取り組み、企業価値の向上を目指すことです。

「従業員の健康に重きを置く」という点では同じですが、ウェルビーイング経営では社会的な幸福感や満足度も重要であり、健康経営よりも対象範囲が広いため、混同しないように気を付けましょう。

ウェルビーイング経営のメリット

ウェルビーイング経営を進めることは、企業に生産性の向上や離職率の低下といったメリットをもたらします。

生産性の向上につながる

ウェルビーイング経営は、従業員が心身ともに健康で、人間関係も良好な状態を目指す経営手法です。健康でいきいきと働きやすい職場環境が整うことは、従業員のモチベーション向上につながり、意欲を持って仕事に取り組む従業員が増えることで生産性の向上に貢献します。

離職率の低下につながる

厚生労働省が公表した「令和4年 雇用動向調査結果の概要」によると、転職入職者が前職を辞めた個人的理由の上位が「労働時間、休日などの労働条件が悪かった」と「職場の人間関係が好ましくない」でした。つまり、労働環境や人間関係が悪い職場は、従業員にとって大きなストレスとなり、離職につながります。しかし、ウェルビーイング経営によって労働環境や人間関係が改善されれば、離職率の低下につながるだけでなく、採用でもポジティブなアピール要素となり、優れた人材の確保や定着に役立ちます。

参照元:厚生労働省「令和4年 雇用動向調査結果の概要」
※P15をご参照ください。

ウェルビーイング経営のデメリット

さまざまなメリットが得られるウェルビーイング経営ですが、コストがかかる、長期的な施策が必要になるといったデメリットな面もあります。

コストがかかる

ウェルビーイング経営では、従業員が身体的にも精神的にも、そして社会的にも良好な状態をキープして働けるような仕組みづくりが欠かせません。しかし、企業によっては多様な働き方を認めたり、労働条件を改善したりしなければならず、その結果、コストがかかる可能性があります。

長期的な施策が必要になる

ウェルビーイング経営は始めたからといってすぐに成果が出るわけではありません。労働環境の改善や経営方針の転換などには長期的準備期間が必要で、従業員にウェルビーイング経営を認知させるのにも長い時間がかかります。また、企業の業績と異なり、従業員のモチベーションや良好な人間関係などは数値化することが難しく、すぐに成果を確認できません。そのため、ウェルビーイング経営ではしばらくの間メリットが得られずとも簡単には諦めず、腰を据えて取り組むことが重要です。

ウェルビーイング経営の進め方

ウェルビーイング経営を実現したくても、何から始めるべきかわからない方は少なくありません。そこでここからはウェルビーイング経営を実現するための手順について解説します。

労働環境を改善する

ウェルビーイング経営を進めるにあたり、まず着手すべきなのは労働環境の改善です。従業員が心身ともに健康で、幸福を感じながらやりがいを持って働くためには、ストレスフリーで働ける労働環境に整える必要があります。

例えば、長時間労働が常態化しているなら、ただ早く帰るように呼びかけるのではなく、長時間労働の原因を特定しなければなりません。そしてスケジュールや作業量の見直しなど改善に向けた取り組みを推進することが重要です。

また、働き方に柔軟性がない場合、従業員の幸福度や健康に悪影響を及ぼしかねません。テレワークやフレックス制度、多様な雇用形態を導入して、従業員のワークライフバランスを推進しましょう。

さらに健康診断やストレスチェックの実施など、従業員のヘルスケアをサポートする施策も欠かせません。加えて、社内の人間関係が悪化するとストレスを感じやすくなり、生産性の低下につながるため、社内コミュニケーションの活発化にも力を入れることが大切です。例えば、懇親会やサークル活動の補助、社員食堂や休憩スペースの設置など、福利厚生の充実を図ることで従業員同士のつながりを強化でき、ウェルビーイングに貢献できます。

このようなウェルビーイング経営に関わる施策を行ったら、従業員満足度調査を実施しましょう。調査結果を分析することで従業員の現状を把握でき、改善につなげられます。

ツールやシステムを導入する

ウェルビーイング経営を実現するためには、デジタル技術を積極的に導入するのがおすすめです。例えば、従業員の作業負担軽減に役立つツールやシステムを導入することで、労働環境の改善や柔軟な働き方につながり、結果的にウェルビーイング経営の実現に寄与します。また、コミュニケーションツールを活用すれば、情報共有がスムーズになるだけでなく、コミュニケーションのハードルが下がり、社内コミュニケーションの活性化が期待できます。ほかにも従業員満足度調査を実施する際に、調査結果を蓄積・分析できるシステムを取り入れれば、迅速かつ適切な改善につなげられます。

アウトソーシングの活用

ウェルビーイング経営にかかわらず、従業員の健康管理は法律上の義務です。しかし、従業員の健康に関する情報は多く、従業員数が多ければ多いほど業務も増えます。ベルシステム24では、健康管理クラウド「Growbase」を提供するウェルネス・コミュニケーションズ株式会社と共同で、「産業保健領域の業務代行」、「産業保健や健康経営の施策・実行の伴走支援」、「従業員健康状態の可視化」など、産業保健の取り組みに課題をお持ちの中堅・中小企業様に、安全労働衛生法上の取組み企画から実行支援までワンストップで支援する「産業保健支援ソリューション」を提供しています。ウェルビーイング経営を始めたいと考えているなら、ぜひ、「産業保健支援ソリューション」の導入を検討してみてください。
関連記事:産業保健支援ソリューション

まとめ

ウェルビーイング経営は、従業員が身体的、精神的に健やかで、社会的にも良好な状態をキープできるように労働環境を整え、生産性の向上につなげる経営手法です。ウェルビーイング経営を実現させるには、労働環境の見直しや福利厚生の充実などの取り組みはもちろん、自社に合う最適なツールやシステムの導入も行いましょう。

※文献によりウェルビーイング、ウェル・ビーイングと記載が異なりますが、本文はウェルビーイングに統一しております。

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