医師の働き方改革で変わる、MRの”訪問の代わりになる”情報提供手段とは

4月からスタートした医師の働き方改革では、全ての勤務医に新たな時間外労働の上限規制が導入されることで勤怠管理の厳格化が進み、これまで以上にMRの“訪問の代わりになる”情報提供手段の構築が求められます。ここでは医師の働き方改革による製薬企業の情報提供活動への影響や、訪問の代わりになる情報提供手段の実例について取上げます。

マルチチャネル×情報提供4

 

医師の働き方改革、鍵を握る研鑽と労働時間の違いとは

今年4月からスタートした医師の働き方改革では、すべての勤務医に対して新たな時間外労働の上限規制(原則:年間960時間以下)が設けられましたが、救急医療など地域医療に欠かせない医療機関や、研修医など集中的に多くの症例を経験する必要がある医師などに対しては、年間1,860時間/100時間未満を適用するとともに、追加的健康確保措置(連続勤務時間制限、勤務間インターバル、代償休息、面接指導と必要に応じた就業上の措置―など)を講じる義務が医療機関の管理者に課されており、違反した場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられることになりました。

医師は患者から治療を求められたときに正当な理由なく断ってはならない「応召義務」があることや、「患者さんのために」という自己犠牲的な長時間労働のうえに医療が成り立っている側面があります。さらに、医師は日々進歩する診療や治療法を学んでいかなければならないという特殊性もあり、この「研鑽」と「労働時間」の切り分けが難しいことも指摘されていました。

こうした状況を踏まえ、厚労省は今年3月、これまでの研鑽と労働時間の考え方を改めて整理する目的で、「医師の研鑽の適切な理解のために」という指針を出し、医療機関の理解を求めています。まず、医師の研鑽とは、「診療等の本来業務の傍ら、医師の自らの知識の獲得や技能の向上を図るために行う学習、研究等」を指し、労働時間に該当するかどうかは、「使用者の指揮命令下に置かれているかどうか」で判断され、所定労働時間内に行う研鑽は労働時間に該当するが、所定労働時間外に行う研鑽には、労働時間に該当する場合としない場合があり、特に、教育・研究を本来業務に含む大学病院等の医師は、本来業務と研鑽の明確な区分が困難なことが特に多く、医師と上司の間で円滑なコミュニケーションを取り、労働時間に該当する本来業務や研鑽なのか、労働時間に該当しない研鑽なのかを明確にする必要があるとしています。

image-png-3

令和6年3月29日 厚生労働省公表「医師の研鑽の適切な理解のために」 

このように、業務上不可欠か否か、また、業務上不可欠であることが使用者、上司と合意できていることが重要であり、医療機関が研鑽の取扱いに関するルールを定め、適切な運用を図る必要があるとされています。

一方、現状では院内ルールを見直した病院は少ないようですが、今後勤務管理の厳格化が進むことで、研鑽の取り扱いも明確化され、新薬の勉強(説明会)に限らず、MRのリアル面談による情報提供が必要な業務に当たらないと判断される可能性があり、医療機関の説明会の考え方を踏まえた対応が必要になります。

“訪問の代わりになる”情報提供、鍵は効率性

製薬業界を巡っては、プライマリー領域からスペシャルティ領域への製品特性の変化に加え、従前からの医療機関の訪問規制、加えてコロナ禍による訪問禁止といった外部環境の変化により、ここ数年で急激なデジタルシフトが生じています。一方、医師もインターネットを通じてある程度の医薬品情報を入手することができるため、MRに依存しなくても様々な情報を得ることができる環境にあります。

しかし、処方経験が限られる新薬の情報や、適応拡大に関する情報、慎重投与とされている背景の情報など、詳しく話が聞きたい場合は訪問で情報提供を受けたいというニーズが高いと考えられますが、既存製品や疾患に関する情報、ウェブ講演会の案内といった情報は、企業のオウンドメディアやメール、医師向け専門サイトなどのチャネルから得ることができるため、こうした情報提供のニーズは必ずしも高くないことが考えられます。

製薬企業は、医師の限られた時間で有益な情報を提供してくれるMR体制の構築や、MRの”訪問の代わりになる”情報提供チャネルを充実させることで、“効率的な情報提供を構築していく必要があります。

“訪問の代わりになる”情報提供の実例

“訪問の代わりになる”情報提供には様々な手段がありますが、ここでは株式会社ベルシステム24が提供するサービスを2つご紹介します。

アウトバウンドコール

企業から見込み客に対して電話やメール、訪問などで積極的に営業をかける手法をアウトバウンドセールスと呼びます。医薬品の情報提供はMRが医師に対面で実施するのが基本ですが、▽未訪問施設のため医師とコンタクトがとりづらい、▽MRのリソースが限られターゲット施設へのコンタクトができていない、ターゲット医師へのアプローチを支援する「MRサポートアウトバウンドサービス」を提供しています。

内資系製薬企業の例では、MRが訪問していない医療機関(診療所)に対し毎月異なるテーマに沿った情報を提供、MRのアポイントの打診やニーズヒアリングといったアウトバウンドコールを実施しました。使用上の注意改訂に関する簡易提供の事例では、医師と対話できたのは対象施設のうち37.5%MRのアポイントを取得できたのは15.0%という結果でした。こうした事例を元に定期報告を通じてテーマ毎の医師の情報提供に対する反応や質問、医師とアポイントの取りやすい・対話しやすい時間帯などの分析を行い、次回のテーマに沿った情報提供に向けた業務設計やFAQの作成・提供を行っています。アウトバウンドコールの結果分析やトークスクリプトやFAQの内容の見直し・改善を行い次回のコールに繋げるといったPDCAを回すことでサービスの改善に繋げています。

image-png-4

また、外資系医療機器企業の例では、▽新規医療機器の認知度が低く、医療機関へのアプローチが難しい、▽全国の医療機関へ情報提供を行いたいが、 SRSales Representative:医療機器営業 )のリソースが限られ対応が難しい-といった課題に対し、認知度を高めるため、全国のクリニック・診療所へ初回のアプローチのためのアウトバウンドコールを実施、資料送付の了解を得たクリニック・診療所の医師に、資料に基づいた医療機器の情報提供を実施しました。この事例では、初回アプローチの際、医師の都合のよい曜日・時間帯を伺ったうえでコールを行うことで、効率的なアウトバウンドを実施、対象となる医療機関の60%以上に資料を送付し、情報提供を行うことができました。

質の高い在宅業務の推進

医療機関の訪問規制や医師の働き方改革により、MRと医療従事者との接点が少なくなっている中で、これまで当社が培ってきた医療従事者との対話ノウハウや音声データを活用することで、新たな医療従事者とのコミュニケーション方法を実現し、医薬品に関する適正な情報提供を効率的に実施する「※次世代C-MR」サービスの提供を始めています。
※次世代C-MR:セントラル/コンタクトセンター型のMR

具体的には、これまで訪問を主体としてきたMR活動を当社のセンターに集約化、リモートで情報提供を実施することで、MRが訪問できていないエリアのターゲット施設や医師に情報を提供したり、アポイントを取得することで、MRの工数削減や処方獲得に繋がることが期待できます。また、リモートを通じて医療関係者との音声データを蓄積・分析することで、情報提供の質の品質向上を図っていきます。MR活動の効率化だけでなく、働き方改革にも貢献できるソリューションであり、“訪問の代わりになる”新たな情報提供の手段の一つとして導入をご検討頂く製薬企業様が増えています。

次世代C-MR

 

まとめ

MRによる訪問と、“訪問の代わりになる”情報提供手段を組み合わせることは、MR活動の効率化だけでなく、MRの働き方改革にもつながります。医師が必要とする情報をいかに効率よく提供できるかが、今後の製薬企業にとっての課題であり、競合との差別化の鍵を握るのではないでしょうか。

関連資料:医薬関連ソリューション

関連ブログ:【2024年施行】病院における医師の働き方改革とは?看護師の現状も

関連ブログ:医師の働き方改革が求められる理由 課題や必要な取組みを紹介

この著者の最新の記事

医師の働き方改革で変わる、MRの”訪問の代わりになる”情報提供手段とは
ページ上部へ戻る