従業員の健康管理とは? 必要性や具体例、チェックしたい厚労省の施策を解説

従業員の健康管理とは? 必要性や具体例、チェックしたい厚労省の施策を解説

コロナ禍などの影響による肉体的・精神的・社会的な不調を懸念して、近年はますます企業における従業員の健康管理が重視されています。この記事では、健康管理が求められる理由や、関連する厚労省の施策、企業が行っている具体例などを紹介します。従業員の健康管理の導入を検討している企業担当者の方はぜひご一読ください。

従業員の健康管理とは?

「健康管理」とは、ただ“病気ではない”ことではなく、肉体的・精神的・社会的に満たされた状態を維持するために、“生活環境や生活習慣などを整える”ことを言います。近年では、企業では従業員の健康管理を個人に任せる形ではなく、組織全体として取り組む傾向が高まっています。

従業員の健康状態は、企業の生産性と無関係ではありません。健康状態が悪い従業員が多いと、仕事のパフォーマンスも低下してしまいます。企業の利益のためにも、従業員の健康管理に配慮することは非常に重要です。

注目を集める背景

従業員の健康管理に注目が集まる背景には、国が推進する施策や取り組みがあります。

例えば、経済産業省は2014年より、健康経営®に力を入れている企業を、「健康経営銘柄」として選定する取り組みをスタートさせています。健康経営とは、経営的な観点から従業員の健康管理に留意することです。

経済産業省は「健康経営優良法人認定制度」を採用し、その中でも特に優良な企業を「ホワイト500」として認定しています。

また、厚生労働省では、企業が健康保険組合などと連携して従業員の健康管理を行う「コラボヘルス」の取り組みを推進しています。

ほかにも、国民の医療費の増加や労働人口の減少、コロナうつの急増などの要因も、従業員の健康を保つことに対する重要性を高めています。

健康経営銘柄、ホワイト500、コラボヘルスの詳細は、以下の記事をご参考にしてください。

※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

関連記事:【2023】健康経営銘柄に選定されるメリットとは? 企業一覧と選定基準
関連記事:ホワイト500の認定要件と認定企業の取り組み事例とは?
関連記事:コラボヘルスとは? メリットや課題、推進方法、事例を紹介

従業員の健康管理が必要な理由

企業が従業員の健康管理に留意すべき理由は、主に三つあります。以下に詳しく紹介します。

健康管理は企業の義務であるため

いくつかの法律に明記されているように、従業員の健康管理を行うことは企業の義務です。例えば、労働契約法第5条には以下の文が定められています。

「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」

引用元:e-Gov法令検索「労働契約法」

また、労働安全衛生法第7章では、第64条から第71条にわたって、企業において健康を保持増進するための措置が定められています。

参照元:安全衛生情報センター「労働安全衛生法 第七章 健康の保持増進のための措置(第六十四条-第七十一条)」

このように、法律上では企業が従業員の健康と安全を守ることが大前提です。これにより、従業員が安心して働きながら、最大限の能力を発揮できる環境を目指します。

企業価値の向上につながるため

近年の求職者は、企業を選ぶ際に、給与だけではなく労働条件や職場環境にも重きを置く傾向があります。ブラック企業のイメージを持たれると、優秀な人材を確保しにくくなり、企業価値が低下しかねません。

従業員が心身ともに健康で、最大限のパフォーマンスを発揮できる職場は、離職率が低く生産性は高くなります。また「ホワイトな職場である」という評判が広まれば、優秀な求職者が集まりやすくなるほか、投資家や顧客からの信頼を獲得できます。

社会保険料の負担軽減につながるため

従業員全体の健康度が上がることで、治療のために通院する機会が減り、医療費の軽減が実現できます。医療費の軽減は、保険者である従業員本人と企業で負担し合っている社会保険料の軽減にもつながります。

健康管理を行う際にチェックしたい厚労省の施策

企業が従業員の健康管理を実施する際は、厚生労働省が行っている施策を参考にしましょう。厚生労働省の公式サイトでは、以下の項目について情報を発信しています。

【感染症・インフルエンザ関連の情報】
新型コロナウイルスやインフルエンザ、ノロウイルス、感染性胃腸炎や肝炎などについて、発生状況やワクチン情報などを発信しています。それらをチェックし、特に流行期は消毒やマスクの着用などの感染対策を徹底しましょう。

【熱中症情報】
熱中症の発生状況や予防策などを発信しています。特に暑い時期に屋外作業や営業の外回りなどがある企業は、従業員に対して熱中症対策の指導を行うことが必要です。

【受動喫煙対策・たばこ関連の情報】
WHO(世界保健機関)が定める、たばこの規制に関する枠組条約の内容や各種統計情報、改正健康増進法における受動喫煙対策の内容などを確認できます。それらを参考に、企業でも適切な受動喫煙対策を実施しなければなりません。

【女性の健康づくり】
近年問題視されている「生理の貧困」をはじめ、女性の健康週間や女性の健康に関するサイト「女性健康推進ヘルスケアラボ」などの情報を確認できます。

【難病・慢性の痛みへの対応】
難病対策や体の痛みへの支援事業などの情報が得られます。労災予防のためにも、企業がおさえておきたいポイントです。

参照元:厚生労働省「健康」

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企業が行う健康管理の具体例

企業において行われている健康管理の施策について、五つの具体例を紹介します。

産業医の選任

従業員の健康を守るためには、従業員が不調を感じた際に、すぐに医療につなげることが重要です。よって企業内には、従業員の健康について適切にアドバイスができる産業医の存在が欠かせません。

産業医の役割は最低月1回の職場の巡視をはじめ、健康診断や健康に関する面接指導、衛生教育、従業員の健康障害の原因調査や再発防止など、多岐にわたります。

産業医については、以下の記事をご覧ください。
関連記事:産業医とは? 医師との違いや役割、必要性について解説

労働時間の管理(長時間労働の是正)

厚生労働省では、残業時間の上限を原則として、月45時間および年360時間と定めています。また、特別な理由により残業時間が多くなる場合でも年720時間、休日労働を含む複数月平均80時間、そして月100時間を超えると罰則が科される可能性があります。

過剰な労働時間は従業員の健康を損なうだけではなく、集中力が続かなくなることによって、生産性の低下を招きかねません。企業は従業員の労働時間を適切に管理しなければならず、長時間労働が常態化している場合は是正が必要です。

参照元:厚生労働省「時間外労働の上限規制」

長時間労働の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:長時間労働につながる代表的な原因とは? 問題と対策を紹介

健康診断の実施

労働安全衛生規則第44条では、事業者は原則として、年1回に従業員の健康診断を実施することが明記されています。また、新たに雇い入れる従業員に対しても、同様に健康診断を行わなければなりません。

さらに、危険物を扱う仕事や深夜業などは、半年に1回の健康診断が義務付けられており、これに違反すると、罰金刑などが科される可能性があります。

参照元:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」

健康診断の詳細は、以下の記事をご覧ください。
関連記事:会社で行う健康診断とは?検査内容や料金、従業員に周知すべき前日の過ごし方までを解説

ストレスチェックの実施

近年は、うつ病などで休職する人も多いため、企業は従業員の身体面だけではなく、精神面での健康管理にも配慮することが必要です。従業員の精神面における健康度を測る際には「ストレスチェック」が役立ちます。現在、50人以上の従業員がいる事業所では、年に1回以上の実施が義務付けられています。

ストレスチェックは、まず職場環境のストレスに関する質問票に回答を記入し、ストレスが高いと診断された人には、医師による面接指導などが行われる仕組みです。それにより、従業員のメンタルヘルス不調の予防や職場環境の改善などにつなげています。

メンタルヘルスや企業のストレス管理の詳細は、以下の記事をご覧ください。

関連記事:メンタルヘルスとは 職場においての重要性とケア方法について解説
関連記事:ストレスマネジメントとは? ストレス管理の方法と企業が取り組むメリット

健康管理システムを導入する

産業医を選任する必要がない規模の事業所では、健康管理システムを導入して、従業員の健康管理を行うこともおすすめです。また、大規模な事業所でも健康管理システムの導入により、情報管理がスムーズになるメリットもあります。

まとめ

従業員の健康管理は、企業価値を高め、生産性を向上させるためにも非常に重要です。健康診断やメンタルチェックの実施などに加え、健康管理システムを取り入れることで、さらに情報の管理がスムーズになり、効率的に健康管理の施策を実施できます。

ベルシステム24の「産業保健支援ソリューション」は、従業員の健康管理に有用な健康管理システムです。総務部などが保管する、従業員の健康診断結果や残業時間などのデータを連携させれば、従業員の健康状態を可視化し、専門チームによる健康管理のサポートや運用面での支援を行えます。

ベルシステム24の「産業保健支援ソリューション」の詳細は、以下の記事をご覧ください。

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